作成日:2025.12.25
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初級
制度・政策
託送料金/制度改定
#資源エネルギー庁
#経済産業省
#取りまとめ/報告書
#制度タイプ:託送料金
#制度(総称)
※本記事は、作成日または最終更新日時点で公表されている制度情報・数値・資料に基づいて作成しています。
揚水の特措置とは?
託送料金の二重課金を避ける仕組みと適用条件をやさしく解説
・揚水発電や蓄電池を介して電気を外へ送る形だと、託送料金が二重に課され得ることがあります。
・その回避のため、充電側は「ロス相当分」など必要な部分だけを課金対象にできる特別措置が、一般送配電事業者の託送供給等約款(附則)にあります。
→適用には、外部への託送、区分計量、制御手順などの条件があります(まずは30秒チェックへ)。
[たとえると]
同じ荷物を「倉庫に入れるとき」と「倉庫から出すとき」で2回送料がかかりそうなところを、倉庫のロス分だけに調整して二重にならないようにするイメージです。
CONTENTS目次
30秒でわかる:あなたの案件は対象になりそう?
①二重課金回避の仕組み
充電(揚水・蓄電)の課金対象は全量ではなくロス相当分(損失率分)に圧縮する仕組み。
※放電側の託送料金は、電気を受け取る需要家側で通常どおり課金。
②損失率による「課金対象」の圧縮
約款では、充電側の課金対象を損失率(協議で決める)で圧縮して計算し、コスト負担を適正化します。
③30秒で見る"詰まりやすい3点"
適用には、事前申出・区分計量に加え、「定めた手順で充放電を制御できること」がポイントです。
※正式な必須要件は次ページの5要件。ここでは特に詰まりやすい3点だけ先に確認します。
適用対象? 30秒判定
前提:外部への託送供給(需要場所外へ送る)があること
・接続供給に係る契約者として、事前に申出と協議ができますか?(多くは小売電気事業者等)
・充電分とそれ以外を、区分計量または協議で明確に区分できますか?
・手順に従って、揚水/蓄電・発電/放電を制御可能ですか?
Yesが3つなら要件を満たす可能性あり
次ページ以降で約款要件を確認し、一般送配電事業者に事前相談してください
Noが含まれる場合
設計や運用を変えない限り、適用が難しい可能性があります
※最終判断は、属地の一般送配電事業者の託送供給等約款と個別協議によります
なぜ必要か(託送料金の二重課金リスクと特措の役割)
[起きがちな課題] 電気の中継点として使うと、二重に課金され得る
特別措置がやっていること
二重で課されることを避ける観点から、充電として受け取った電気のうち、ロス相当分(損失率分)など必要部分だけを課金対象にできるようにしています。
【誤解しやすい点】
「充電側の課金対象を調整する」趣旨であり、放電してネットワークを使う側の託送料金まで消える、という意味ではありません。
正式名称と根拠文書(用語の整理)
呼び方は資料や文脈で揺れますが、根拠はすべて同じ「約款の特別措置」です
どこに書いてある?(根拠)
一般送配電事業者の「託送供給等約款」の附則に、特別措置として規定されています。
例:東京電力パワーグリッドの託送供給等約款
「揚水発電設備等が設置された需要場所に接続供給を行なう場合の特別措置(附則)」として記載があります。
呼び方が複数ある理由
・国の整理(資源エネ庁資料):
蓄電池や揚水発電設備に関する特別措置の考え方として説明(蓄電池特措など)
・需給調整市場のガイド(ePRX):
この附則の特別措置を「揚水等特措」と呼んでいます
用語ミニ辞典
・託送料金
送配電ネットワークの利用料(一般送配電事業者に支払う)
・需要場所
電気を使う場所(需要の単位)
・供給地点
その需要場所に電気を供給する接続点
・区分計量
充電分とその他分を別々に測れるようにすること
・損失率
充放電や揚水発電に伴うロス相当分を扱うための係数(協議で定める)
仕組みを2パターンで理解する(特措なし vs 特措あり)
例(イメージ):充電100のうちロス20、放電80なら、充電側の課金対象は主に20(ロス相当分)になります。
注:ロスの大きさは協議で定める損失率など、個別条件によります。
特措の仕組み(課金対象の再計算)
課金対象電力量(kWh)の考え方[電力量]
課金対象電力(kW)の考え方[最大電力]
損失率(ロス率)について
・ロス率は直接計量できないため、協議により決定します。
・供給地点ごとに、あらかじめ1年ごとに協議して定めます(年次で見直し)。
設計上の注意
特措を使うには、揚水・蓄電の分と、その他の負荷等を明確に区分できる計量設計が必要です。
区分計量ができない場合、適用不可となる可能性があります。
適用条件と協議事項 [申出主体:接続供給に係る契約]
適用条件(約款要件の要点)
[要件1] 外部への託送
揚水・蓄電に充てた電気が、別の需要場所へ託送されること(需要場所の外へ出ること)。
[要件2] 明確な区分
揚水・蓄電の分と、その他の電気を明確に区分できること。加えて、次の量を特定できることが前提です。
• 揚水最大電力等、その他最大電力等
• 揚水等接続供給電力量、その他接続供給電力量
[要件3] 制御できること
あらかじめ定めた手順により、揚水・蓄電設備を制御できること。
協議で決める5点(実務の最短ルート)
❶区分計量の方法
どこで何を測るか(単線結線図等で確認)
❷最大電力等の考え方
揚水最大電力等とその他最大電力等の切り分け
❸揚水等損失率
供給地点ごとに、年次で協議して決定
❹運用手順
充放電の制御手順と記録方法
❺年次更新のやり方
いつ、何を見直すか(損失率更新など)
注:分割接続供給(契約者が複数)の場合は、関係者間で整理のうえ申出が必要です(約款例あり)。
用語補足
需要場所:メーターで電気を受け取る場所(約款用語)
一般送配電事業者:地域の送配電会社(一次情報の標準表記)
事業採算への影響(制度として確実に言える範囲)
制度メカニズムによる変化
課金対象の圧縮
充電電力量の「全量」から、損失率に基づく「ロス相当分」を中心とした算定に変わります。これにより課金対象となる電力量・電力が変動します。
託送料金の変化
制度の趣旨(二重課金回避)により、多くのケースで充電側託送料金の適正化(低減)が見込まれますが、具体的な削減額は個別の条件計算によります。
追加コスト・留意点(約款)
初期投資(計量器等)
東電PG約款例では、接続供給電力量の計量に必要な計量器等は当社負担で取り付けるのが原則です。ただし、契約者希望の付属装置や多額工事は契約者負担となる場合があります。
・ 盤改造・配線分離などは別途費用の可能性あり
運用コスト
損失率の協議と年次更新、データ管理などの事務が継続的に発生します。
影響額の判断式(概念)
年間影響(円/年) = (特措なし託送料金) − (特措あり託送料金) − (追加運用コスト)
※実額は属地の約款・料金メニューで試算
制度として言える結論:
揚水等特措により、充電側の課金対象が「全量」ではなく「ロス相当分中心」の算定になります。そのため、充電側の託送料金が変化し得ます(増減は料金メニュー、充放電量、損失率などで決まります)。
事業採算への影響(制度として確実に言える範囲)
[FAILURE 1]
区分計量が不十分で適用できなかった
回避策:初期設計ですり合わせ
基本設計の段階で、区分計量の成立性を最優先で確認してください。特に発電設備等が併設されると潮流が複雑になり、充電分の特定が難しくなる点に注意が必要です。
[FAILURE 2]
損失率を「設備効率」と混同して協議が長期化
回避策:制度整理の理解
損失率は直接計量できないため、あくまで「協議で決める係数」であるという制度整理に合わせて協議を進めてください。設備スペック上の効率とは異なります。
[FAILURE 3]
市場要件と混同して社内説明が破綻
回避策:目的別の切り分け
「約款(託送の特措)」と「需給調整市場(ePRX)」の要件は別です。混同を避けるため、目的別に1枚の資料で明確に切り分けて整理することをお勧めします。
よくある質問(Q&A)
制度の仕組みや適用条件について、現場でよくある疑問と誤解を解消します。
Q
需給調整市場に出すなら必須ですか?
必須とは限りません。
参入形態や契約形態によって整理が変わるため、ePRXガイドと属地の一般送配電事業者の契約で確認します。
Q
揚水の特措置は法律ですか?
根拠は約款の特別措置です。
一般送配電事業者の託送供給等約款(附則)にある特別措置が根拠です。まずは属地の約款を確認します。
Q
ロス率(損失率)はどう決まりますか?
協議により決定します。
直接計量できないため、協議により決定し、供給地点ごとに年次で協議して定めます。
Q
他の負荷や発電設備があると使えませんか?
一律に不可ではありません。
充電分を明確に区分できることが要件です。発電設備等が併設されると特定が難しいケースがあるため設計が重要です。
Q
誰に相談すればいいですか?
属地の一般送配電事業者です。
属地の一般送配電事業者(送配電会社)の託送窓口です。案件の計量設計と運用を示して事前相談するのが近道です。
実務チェック・出典
公開前チェックリスト
制度説明のチェック
□ 二重課金を避ける観点であることを明記した
□ 「課金対象外」の意味を誤解しない注記を入れた
□ 適用条件(外部への託送、区分、制御)を要点で示した
□ 算定式(kW・kWh)と損失率の決め方を示した
□ 属地の一般送配電事業者の約款で最終確認が必要と明記した
実務チェック
□ 単線結線図と計量設計(メーター配置、測定量)が用意できる
□ 協議で決める5点(区分、最大電力等、損失率、運用手順、年次更新)が整理できている
□ 追加工事費と計量器費用負担の可能性を織り込んだ
クリック可能な一次情報・出典リスト
資源エネルギー庁 資料4-1「蓄電池への電気の供給の在り方について」
[制度趣旨] 発行: 2023-12-26 参照: 2026-01-07
https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/denryoku_gas/pdf/068_04_00.pdf東京電力パワーグリッド「託送供給等約款」
[附則(揚水発電設備等の特別措置)] 実施: 2025-04-01 参照: 2026-01-07
https://www.tepco.co.jp/pg/consignment/notification/pdf/takusou_yakkan20250131.pdfePRX「揚水発電設備または蓄電池設備を用いて需給調整市場に参入する場合の取扱いガイド」第2版
[市場連携] 発行: 2025-04-01 参照: 2026-01-07
https://www.eprx.or.jp/outline/docs/yousuichikudenchi_guide_250401.pdfOCCTO「意見募集結果および公表について(参考情報)」
[実務要件] 更新: 2024-11-18 参照: 2026-01-07
https://www.occto.or.jp/news/oshirase_sonotaoshirase_2024_241118_oshirase_1.html監修者
青栁 福雄
Aoyagi fukuo
Energy Link 取締役 COO
系統運用・需要側制御・スマートグリッド分野の実務家。東京電力にて変電所の建設・運用・保守および大口顧客向けエネルギーソリューションに従事。マイエナジー出向時には2002年日韓ワールドカップの複数会場および国際放送センターの電源責任を担当。東光高岳では執行役員としてスマートグリッド事業を統括し、NEDO事業等に参画。2019年にEnergy Linkを創業し、分散型電源の導入・利活用を推進。
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