作成日:2025.12.26
更新日:—
初級
制度・政策
系統アクセス/ノンファーム
#資源エネルギー庁
#電力広域的運営推進機関
#ガイドライン#制度(総称)
#制度タイプ:系統アクセス
※本記事は、作成日または最終更新日時点で公表されている制度情報・数値・資料に基づいて作成しています。
N-1電制とは?
事故時だけ瞬時に発電を抑えて系統の空きを増やす仕組み
記事の概要
単一設備故障時に瞬時に発電出力を制限し、平常時の送電容量を拡大する仕組みです。再エネ接続を促進する一方、事業判断には費用負担やリスクの正確な理解が不可欠となります。
CONTENTS目次
N-1電制 3つのポイント
この仕組みを理解するための最も重要なエッセンス
事故時だけ「瞬時」に制御
送電線故障などが起きた瞬間に、リレーシステムで自動的に発電出力を制限(または遮断)し、残った送電設備が過負荷にならないよう電源制限を行います。
平常時の「空き」を増やせる
事故時制御を前提にすることで、従来空けていた「安全余裕」を平常時に活用し、運用可能な送電容量を拡大します。(運用容量=平常時に流せる上限)
導入判断は一次情報で
「自分の電源が対象になるか」と「費用・精算ルール」は、必ず連系エリアの一般送配電の一次資料で確認してください。なお、N-1電制は費用便益評価等を踏まえ検討され、必ず適用されるとは限りません。
なぜ今、N-1電制が必要とされるのか
これまで日本の送電網は、「N-1(エヌマイナスイチ)基準」という極めて安全性の高いルールで運用されてきました。これは、どこか1つの設備が故障しても電力供給に支障が出にくいよう、送電容量にあらかじめ大きな余裕を持たせておく考え方です。
しかし、再生可能エネルギーの導入加速に伴い、多くの地域で系統の空き容量が不足しています。送電網の新設・増強には大きなコストと時間を要することがあるため、既存の設備をより賢く使い切る工夫が不可欠となりました。
これまでの常識:安全マージンの確保
N-1基準に基づき、1回線故障時でも送電を継続できるよう余裕を持たせた運用を行ってきました。平常時は送電線の能力をフルに使わず、常に「予備の車線」を空けておくような運用です。
直面する課題:系統増強の限界
再エネ電源が急増する一方で、鉄塔や送電線の新設・増強には用地交渉や工事で一定の時間を要することがあるため、電源開発のスピードに対応しきれない場合があります。
解決策:日本版コネクト&マネージ
「事故が起きたら瞬時に制御する」技術(N-1電制)などを導入し、安全を維持しつつ、これまで「空けておいた余裕」を平常時に活用します。
N-1電制を一言でいうと
普段は多めに電気を流し、事故時だけ一瞬で絞って残った設備を守る
平常時の運用
「もし1つ壊れても大丈夫な余裕」をあえて減らし、その分だけ多めに電気を流します(運用容量の拡大)。
故障発生・検出
送電線事故などをリレーシステムが検知。瞬時に対象電源へ「電源制限(出力抑制または遮断)」信号を送ります。
直後の制御
信号を受けた発電所は即座に出力を抑制または遮断(停止とは限りません)。残った送電線のパンクを防ぎます。
対象電源の選定
対象は一般送配電が手順に沿って事前に選定します。優先順位に基づき合理的な電源を指定します。
重要な適用範囲と制約
対象は原則「特別高圧以上」、「母線故障」は対象外です。
ガイドライン上の整理:
母線故障は適用対象外です。特定の「単一設備故障」を前提とした運用となります。
どの電源が選ばれやすい?(優先順位)
1. 潮流の抑制効果が大きい(少ない台数で効く)
2. 再起動が早い(復旧しやすい)
3. 機会損失が小さい(経済的影響が小)
4. 設置費用が小さい
用語ミニ辞典
・運用容量
平常時に実際に流せる上限の考え方
・特別高圧
送電や基幹系統側で用いられる高い電圧帯
・電源制限
出力を下げる、または遮断すること
・空き容量
その時点で追加的に流せる余地
・母線
変電所で電気を集めて分ける中心部分
・リレー
事故を検知し、制御を素早く動かす仕組み
2車線の道路(送電線)でたとえると?
普段は多めに電気を流し、事故時だけ一瞬で絞って残った設備を守る
[従来] 対策がない場合
[N-1電制] 電制がある場合
電気の場合の「信号」は、出力を下げる(必要に応じ遮断する)ことです
混同しやすい「2つの制御」を整理
両者の関係性:相乗効果
N-1電制で運用容量が増えると、混雑が起きにくくなり、ノンファームの出力制御が減る場合があります(ゼロを保証するものではありません)。
接続のメリットと期待効果
接続可能性の向上
「空き容量なし」とされた地域でも、増強工事の規模が小さくなる場合や、連系時期が前倒しになる可能性があります。
出力制御の低減 [条件付き]
N-1電制で運用容量が増えることで、ノンファーム型接続の電源に対する「平常時の出力制御」が減る効果が期待されます。
運用容量の拡大・混雑緩和
送電線の運用容量を拡大し、混雑緩和に活用する狙いがあります。費用や接続条件の詳細は、一般送配電の公表資料で確認します。
重要な注意事項:
N-1電制は費用便益評価等を踏まえ検討され、必ずすべての案件に適用されるとは限りません。対象となるかどうかは個別の確認が必要です。
接続のリスク・コスト
費用の2分類と精算の全体像
費用は「初期費用」と「オペレーション費用」に大別されます。オペレーション費用は一般送配電事業者が精算し、広域機関が妥当性を確認する仕組みです。
事故時の機会損失と精算実務
事故時に出力抑制や遮断が起きる可能性があります。精算項目や必要データについて、連系エリアの一次資料で実務を確認してください。
既設電源の対応と協議
既設発電所の場合、装置設置に伴う工事の実施タイミングや費用の支払い方法など、個別協議が発生します。
失敗しないためのポイント:
「電制対象になるか」「費用はいくらか」は、接続検討申し込み(または事前相談)で電力会社(一般送配電事業者)からの回答を確認する必要があります
3つの代表的な誤解と正しい理解
Q
N-1電制は「普段から」出力制御される仕組みですか?
いいえ、違います。
N-1電制の主眼は、事故(単一設備故障)が起きたその瞬間に電源制限を行うことです。平常時の混雑管理(ノンファーム型接続による出力制御)とは、タイミングも役割も異なります。
Q
N-1電制があれば、出力制御はゼロになりますか?
ゼロとは限りません。
運用容量が拡大するため、ノンファーム電源の「平常時出力制御」が緩和される効果は期待されますが、系統の混雑状況によっては追加の制御が必要になる場合があります。
Q
万が一、電制が失敗しても大丈夫ですか?
大丈夫ではありません。
電制が適切に動作しない場合、送電設備の過負荷回避ができず、供給信頼度に影響を与えるおそれがあるため、確実に制限できる電源や仕組みが求められます。
制度理解のための要点と一次情報
Wrap Up
一言で:
事故時だけ瞬時に発電を絞って、平常時の空きを増やす運用です。
効果:
接続可能量の拡大と、運用容量拡大により混雑緩和に活用され得る。
リスク:
事故時に出力抑制や遮断が発生し得ます。発生時は、オペレーション費用の精算や必要データ確認などの実務が発生します[出典5,6]。
留意点:
自身の案件が対象になるか、必ず電力会社の一次情報で確認してください。
PRIMARY SOURCES / REFERENCES
OCCTO
N-1電制の基本的な考え方について
更新: 2025-01-23 / 参照: 2026-01-13
https://www.occto.or.jp/news/access_oshirase_2018_181001_n-1densei_shiryou.htmlOCCTO (PDF)
流通設備の整備計画策定におけるN-1電制の考え方
変更: 2025-01-23 / 参照: 2026-01-13
https://www.occto.or.jp/assets/access/oshirase/2018/files/20250123_n-1densei.pdfTEPCO PG
N-1電制について|系統アクセス制度概要
参照: 2026-01-13
https://www.tepco.co.jp/pg/consignment/access/n-1.htmlTEPCO PG (PDF)
N-1電制本格適用に係る費用精算について
発行: 2023-03 / 参照: 2026-01-13
https://www.tepco.co.jp/pg/consignment/retailservice/pdf/n-1_electrical_system0327.pdfOCCTO (PDF)
N-1電制動作時の精算対象となるオペレーション費用について(第78回)
公開: 2024-04-10 / 参照: 2026-01-13
https://www.occto.or.jp/assets/iinkai/kouikikeitouseibi/2024/files/seibi_78_02_01.pdfOCCTO (PDF)
オペレーション費用3項目の整理(第86回 広域系統整備委員会)
参照: 2026-01-13
https://www.occto.or.jp/assets/iinkai/kouikikeitouseibi/2024/files/seibi_86_01_01.pdfANRE (資源エネルギー庁)
エネルギー白書2022 第3部 第3章 第3節
参照: 2026-01-13
https://www.enecho.meti.go.jp/about/whitepaper/2022/html/3-3-3.htmlMETI (経済産業省)
令和3年度エネルギー白書の閣議決定(ニュースリリース)
発行: 2022-06-07 / 参照: 2026-01-13
https://www.meti.go.jp/press/2022/06/20220607002/20220607002.htmlOCCTO (PDF)
系統の接続および利用ルール(ノンファーム型接続)
更新: 2024-07-01 / 参照: 2026-01-13
https://www.occto.or.jp/assets/grid/business/documents/NF_setsuzokuriyou_20240701.pdf先行適用: 2018-10-01 本格適用: 2022-07-05 作成日: 2026-01-13
※各公的機関の公表資料に基づき作成。最新情報は各社Webサイトをご確認ください。
監修者
青栁 福雄
Aoyagi fukuo
Energy Link 取締役 COO
系統運用・需要側制御・スマートグリッド分野の実務家。東京電力にて変電所の建設・運用・保守および大口顧客向けエネルギーソリューションに従事。マイエナジー出向時には2002年日韓ワールドカップの複数会場および国際放送センターの電源責任を担当。東光高岳では執行役員としてスマートグリッド事業を統括し、NEDO事業等に参画。2019年にEnergy Linkを創業し、分散型電源の導入・利活用を推進。
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