作成日:2025.09.21
更新日:2025.12.01
初級
市場・価格
#電力需給調整力取引所
#電力広域的運営推進機関
#取引規程
#市場(総称)
#方向:上げ
※本記事は、作成日または最終更新日時点で公表されている制度情報・数値・資料に基づいて作成しています。
初心者投資家向け・商品別に"実務でわかる"解説
2026年版 需給調整市場(EPRX)入門 【BESS向け】
このスライドでは、需給調整市場(EPRX)の基本から、各商品の詳細仕様、実務参入のポイントまで、段階的に解説します。
主なポイント
・各調整力商品の特徴と役割
・参入条件と実務フロー
・2024年度取引実績と相場感
・2025年以降の制度変更
・ビジネス計算例(ROI)
CONTENTS目次
3行で分かるEPRX
❶ 待機(ΔkW)は全商品共通/発動(kWh)は一次を除く
料金は「待機(能力)=ΔkW」が基本。発動した分はkWhを事後精算(V1/V2)。
[例外:一次のkWhはEPRX市場では精算せず、インバランスに包含]
投資計画ではΔkWを主収益、kWhは上振れ要素として保守的に見積もるのが基本です。
根拠:EPRX/OCCTO公表の取引・精算整理。
❷ 入札は1MW単位でアグリ可
全商品で最低入札量は1MW(=1,000kW)。単体で1MW未満の場合はアグリゲーションで束ねて参加可能。
❸ 時間軸に注意
三次②は2025年度から前日調達・30分ブロック化(応動時間60分以内)。他の商品は2026年度に30分化・前日化(予定)。
EPRXとは
Electric Power Reserve eXchange(電力需給調整力取引所)の略称
2021年〜段階的に5商品を市場化
投資家向けポイント
・主な収益は待機報酬(ΔkW) - 落札すれば原則発生
・手数料は0.06円/ΔkW・30分(2025年度)
・売買取引の約9割は8円/ΔkW・30分以下
商品は全部で5つ(一次、二次①②、三次①②)。ただし、一次オフラインは「参加枠」であり独立した商品ではありません。
投資家向けクイック判定(1分で要点)
❶ 収益の柱
・ΔkW = 待機報酬
調整力能力に対する基本対価(メイン収入源)
・kWh = 発動報酬(一次を除く)
実際に供出した電力量の対価 [一次のkWhはインバランスで精算]
❷ 参入条件
・最低入札量:1MW(全商品共通)
・オンライン監視(一次のみオフライン枠あり)
・アグリゲーション(複数地点の集約)も可能
❸ 制度・価格の前提(2025→2026)
2024年度の実績
・約9割が8円/ΔkW・30分以下で約定
・最高約定価格は19.51円付近(一次・二次①・複合)
上限価格の変更(計画案)
2025年度まで
・一次・二次①:19.51円
・二次②・三次①: 7.21円
2026年度以降[重要:前日取引化の開始より]
・一次・二次①・複合:上限15円
※三次②は上限なし・1σ募集
相場感と将来見通し
・実績:2024年度のボリュームゾーンは0-2円、複合商品の平均落札価格は5.77円。
・注意:2026年度以降は上限15円へ引き下げ予定。
(案ベース。実施時期・内容は最新の公式資料を要確認)
・単価の下落圧力が強まる前提で、ポートフォリオ(JEPX、容量市場等)の設計が必要です。
※最新の「ΔkW上限価格について」を要確認
収益簡易計算式
[ ΔkW収入 = 落札ΔkW × 約定単価 × ブロック数 ]
[ kWh収入 = 調整電力量 × V1/V2単価 ]
※一次はインバランス精算(EPRX内報酬なし)
[ ΔkW登録価格 ≤ 逸失利益 + 一定額 ]
一定額:A種=0.33円、B種=固定費回収の合理的額
(※事務局との個別協議は2026年度より廃止)
※一定の市場支配力を有する事業者は、取引開始前の「算定ロジックの確認」および「四半期ごとの固定費回収状況報告」が必要となります 。
将来試算の注意点
将来シミュレーションは「2026年度以降=上限15円」を基本とし、10円・7.21円の複数シナリオでの算出を推奨します。
本ページは2025年11月時点の審議会情報(2026年度制度変更案)に基づきます。実際の入札前にはEPRX公式情報を必ずご確認ください。
なぜこの市場が必要?
❶ エネ大量導入による不確実性の増大
再エネの導入拡大により、発電の不確実性が増加。実需給は秒〜分オーダーで常に変動し、これを調整する仕組みが不可欠になっています。
❷ 速さの異なる調整力が必要
TSOは周波数を一定範囲内に維持するため、瞬時(一次)→数分(二次)→数十分(三次)と応動速度の異なる調整力を常時確保する必要があります。
❸ 市場化による効率性と透明性の向上
市場を通じた調達により、公平な競争環境と透明性を確保。多様なリソースが参加することで、社会コスト最小化と電力の安定供給を両立します。
調整力の時間スケール
一次:10秒以内 [周波数偏差に即応]
二次:5分以内 [LFC信号・EDCに対応]
三次①:15分以内 [予測誤差・電源脱落対応]
三次②:60分以内 [前日調達、30分ブロック(2025年~)]
投資家向けポイント
・主な収益はΔkW (待機報酬) ※2026年度より募集量が1σへ削減されるため落札難易度に注意
・kWh(発動報酬)は上振れ要素として捉える
・一次のkWhはインバランス(市場外)で精算
・多様なリソースへの参加機会(蓄電池・DR等)
・調達コストの透明性確保
TSOは周波数を守るため、「速さ」の違う調整力を市場で効率的に確保しています。投資家視点では、ΔkW(待機報酬)を基本収入として、kWh(発動報酬)は追加収入と考えるのが適切です。
商品の全体像──5つの調整力商品
一次調整力
主な用途:
周波数制御(GF)
応動時間:
10秒以内
継続時間:
5分以上
ただし、オフライン監視の場合は「設定なし」
監視方式:
オンライン監視
一次調整力(オフライン監視=参加枠)
二次調整力①
主な用途:
LFC・需給バランス
応動時間:
5分以内
継続時間:
30分以上
二次調整力②
主な用途:
需給バランス調整
応動時間:
5分以内
継続時間:
30分以上
三次調整力①
主な用途:
需給バランス調整
応動時間:
15分以内
継続時間:
3時間(※2026年度に入札・約定ブロックを30分化予定)
三次調整力②
主な用途:
FIT特例①・③
応動時間:
45分→60分
継続時間:
30分(前日調達・30分ブロック)
精算の基本フロー
収益の柱は①待機に対する「ΔkW(能力対価)」、②使った分の「kWh(調整電力量)」の2本立て。※一次のkWhだけは市場外でインバランス側の扱い。
週次ブロックから30分化への移行
2024年度: 週次取引(3時間×56ブロック)
2025年度: 三次②は前日調達・30分ブロック
2026年度: 全商品30分化完了予定
※一次調整力(オフライン監視=参加枠)は一次調整力の"参加枠"であり、"商品"ではありません(全体の商品は5つ)。
週次商品(一次・二次①②・三次①)の30分化・前日取引化は2026年度に移行予定。三次②のみ2025/03/14受渡以降は30分ブロック運用。
精算の仕組み
ΔkW・kWh精算方式と市場監視結果、30分化の移行スケジュール
精算の仕組み(ΔkW・V1/V2単価・kWh精算)
【精算の基本(初級投資家向けまとめ)】
・ΔkW(能力・待機):落札すれば原則支払われる「待機報酬」。性能未達は減額対象。
・kWh(調整電力量):指令が出た場合のみ発生する「発動報酬」。kWhは"約定"ではなく、指令に基づく"実績の事後精算"です(一次は市場外)。
・一次調整力のkWhは市場外(インバランス)で精算される特例(EPRX市場内では発動報酬なし)。
週次ブロックから30分化への移行
2024年度:入札:前週に週次3時間ブロックで実施
2025年度:三次②は前日調達(スポット市場の前日)(30分ブロック)
2026年度:全商品:30分化・前日取引化へ移行予定
精算の基本フロー
1. 週間/前日入札・約定→ΔkW確定
2. 当日需給状況に応じて指令
3. 実績データによりΔkW・kWh精算
【重要】
• 重要:kWhの"指令"がなければEPRXからの電力量報酬(V1/V2)は発生しません。
• ただしΔkW(待機)報酬は約定分が支払われます。
• 一次はそもそもkWhを市場精算しない(インバランスで処理)ため、市場内収入はΔkWのみです。
• 下げ調整力(下げΔkW)は当面、市場では調達対象外。
2024年度の相場感:約9割が8円/ΔkW・30分以下で落札
一次調整力は市場内では待機(ΔkW)のみが報酬対象(kWhはインバランス精算)
商品は一次・二次①②・三次①②の5つ。一次オフラインは"参加枠"であり独立商品ではない。
【実務メモ】
・売買手数料:0.06円/ΔkW・30分(2026年度見通し)
・三次②は前日・30分ブロック。週間商品の30分化は段階的に進行中。
・【蓄電池のkWh登録価格の算定ルール】 蓄電池の限界費用(充電原資)は、スポット市場等からの調達費用、または自社電源の充電費用(加重平均等)に基づき算定します。インバランス補給による充電を前提とした算定や、不当に高額な登録は制限されます。
容量料金(ΔkW)
市場約定時の約定価格 × ΔkW で精算
2026年度より全商品が前日取引へ移行
最低入札単位:1MW、上限価格:商品ごとに設定(最新の「上限価格」告知を参照)
電力量料金(kWh)
発動指令時の実績に基づき事後精算
V1単価:上げ調整時(増発・充電抑制)
V2単価:下げ調整時(減発・充電増加)
③ 一次のkWhは市場外(インバランス)で精算(=EPRX内に発動報酬はなし) 一次調整力は市場内では待機(ΔkW)のみが報酬対象で、発動kWhに対するEPRX内の収入はありません。
商品は一次・二次①②・三次①②の5つ。一次オフラインは"参加枠"であり独立商品ではない。
精算タイミング
翌々月第10営業日に前月分を精算(月次)
売買手数料:0.06円/ΔkW・30分(2026年度見通し)
精算時の評価方法
| 商品区分 | パフォーマンス評価 | ペナルティ |
|---|---|---|
| 一次調整力 | 周波数偏差に対する応動実績を評価 | アセスメントⅠ・Ⅱともに未達成の場合、ΔkW料金減額 |
| 二次①/② | 指令値と実績値の乖離率を許容範囲内に | 30分コマごとにΔkW料金減額の可能性 |
| 三次①/② | 指令値に対する追従性を評価 | 未達率に応じた料金減額 |
調整電力量(kWh)の算定・精算はEPRX「料金算定諸元」に準拠(V1/V2 等)。一次のkWhは市場外(インバランス)で処理。
一次のkWhはインバランス精算(市場外):OCCTO 資料(一次のkWhはインバランスに包含)
売買手数料:EPRX公式「売買手数料単価」
全商品の30分化・前日取引化を完了:EPRX 取引概要/意見募集
下げ調整力は当面市場調達せず:EPRX FAQ
入札価格の登録(A種/B種)
A種電源(標準)——既設火力や費用構造がシンプルな電源
一定額 = 0.33円/ΔkW・30分(固定)
[ 上限式: OC + 0.33 ]
B種電源(固定費回収型)——蓄電池など固定費回収が必要な電源
▼ 一定額の算定式(2026年度~)
※他市場収益には、原則として「容量市場収入」を計上(控除)する必要があります
▼ 算入できる固定費の仕分け
・算入できる:アグリゲーター等にかかる費用(人件費、システム費等)、減価償却費、修繕費。
・算入できない:法人税、容量拠出金。
・併設モデル:FIP電源併設蓄電池の場合は「蓄電池にかかる固定費のみ」を算入。
重要ルール
事務局との個別協議(B種電源協議)は2026年度より廃止されました。
今後はガイドラインに基づき、各事業者が適正な価格を自己算定する方式に移行します。当年度の固定費回収が完了した後は、A種(OC+0.33)の算定基準に戻ります。
B種で認められる固定費(例)
※事務局と協議し、当年度に回収すべき「合理的」と認められた範囲のみ算入可。
・O&M費用
保守契約費、点検費、修繕積立など
・アグリゲーター費用
運用代行、制御システム利用料、手数料
・減価償却費・金利
設備投資の回収分(一部算入が可能)
・その他固定費
市場接続費、専用線通信費など
投資家の視点
蓄電池ビジネスでは初期投資やO&M費が重いため、B種申請による回収スキームを事業計画に織り込むことが収益安定化の鍵となります。
ビジネス計算の超要点(1MW・30分ブロック例)
❶ ΔkW収入計算(例)
ΔkW収入 = 供出量 × 約定単価 × コマ数 × 日数
1MW × 8円/ΔkW・30分 × 48コマ/日 × 30日
≒ 11,520,000円(=1,152万円)/月
※標準的な相場(約9割が8円/ΔkW・30分以下)を想定
❷ 手数料計算(例)
手数料 = 供出量 × 手数料単価 × コマ数 × 日数
1MW × 0.06円/kW・30分×48コマ/日×30日
= 86,400円/月(2026年度見通し)
※2026年度手数料単価:0.06円/ΔkW・30分
※1MW=1,000ΔkW。本ガイドのΔkWはkW単位。
❸ kWh収入計算(発動分)
kWh収入 = 実績kWh × V1/V2単価
※上げ調整:V1単価、下げ調整:V2単価
一次調整力のkWhはインバランス(市場外)精算
※一次ではkWh収入をEPRXのV1/V2では見込まない。ΔkW収入のみを市場収入として計上。
❹ 月次損益の考え方
月次損益 =
+ ΔkW収入(例:11,520,000円(=1,152万円)/月)
+ kWh収入(発動実績による)
- 手数料(例: 86,400円/月 ※2026年度見通し)
- 未達ペナルティ(アセスメントⅠ・Ⅱ)
- 運用費・劣化費(リソースによる)
収益性判断の着眼点
・取引数量が増えると落札率・約定価格が低下する傾向
・リソースの種類により制御コスト・劣化費が異なる
・三次②は前日調達・30分単位で取引量が多い
相場感・取引実績(2024年度)+ 今後の見通し
2024年度の実績データと、2026年度以降の上限価格制度変更によるインパクト
2024年度の結果(全商品ベース)
・約9割が 8円/ΔkW・30分 以下で約定。
・最高約定価格は、一次・二次①・複合で 19.51円/ΔkW・30分 付近。
| 商品区分 | 一次 | 二次① | 二次② | 三次① | 三次② |
|---|---|---|---|---|---|
| 平均価格 | 5.2円 | 6.1円 | 4.9円 | 4.3円 | 3.8円 |
上限価格の制度変遷
・2026年度以降、全商品の上限価格が大幅に引き下げ・統一される計画です。
2025年度まで
一次・二次①:19.51円
二次②・三次①:7.21円
2026年度以降(計画案)
一次・二次①(単一・複合すべて)→ 15円/ΔkW・30分 に統一
読み方(投資家目線)
・過去データ:2024年度のボリュームゾーンは0-2円、複合商品の平均落札価格は5.77円。
・将来制度:上限は 15円 まで下がる見込み。
・「単価は下方向の圧力が強い」前提で、ΔkWの獲得量や他サービス(JEPX、容量市場等)とのポートフォリオを設計する必要があります。
一次調整力(オンライン監視)
※「一次オフライン(スカウティング枠)」は一次調整力の参加枠であり、独立した商品ではありません。
精算:能力対価(ΔkW)のみ。詳細はP.7『精算の仕組み』参照
❶ 応動速度・継続時間(FCRの要件)
周波数偏差に対して10秒以内に応動を開始し、5分以上継続して供出可能であることが必要。異常時(電源脱落等)・平常時の両方をカバー。
❷ 制御・監視方法
自端制御(GF:ガバナフリー)で周波数偏差に即応。
通信要件の詳細は最新の取引ガイド/TSO要件に準拠。
オンライン監視(1〜5秒程度)を必須。
❸ 取引ブロック単位
現在は週次商品の3時間ブロック → 2026年度に30分化予定。最低入札単位は1MW(=1,000kW)
❹ 精算方法の特殊性
一次調整力の位置づけ
周波数制御の最前線として、秒単位で即応するリソースの調達市場
2024年〜 市場取引開始
典型的な参入リソース
・火力発電機
・大規模蓄電池(BESS)
・揚水発電(特殊条件あり)
・ハイスペックDR
価格・手数料・ペナルティ
・上限価格:商品ごとにEPRXが設定(最新版参照)
・売買手数料:0.06円/ΔkW・30分
一次調整力(オフライン監視=スカウティング枠)[参加枠]
一次の"参加枠"(独立商品ではない)。平常時対応に特化し、応動30秒・継続要件なし※2026年度より募集量を1σ相当へ引き下げ。
❶ 平常時対応に特化した参加枠
通常の一次と同じGF機能だが、監視は事後データ提出。平常時の周波数調整に特化(異常時必要量のカウント外)。
精算:能力対価(ΔkW)のみ。詳細はP.7「精算の仕組み」参照。
❷ 応動要件の緩和
事後提出(専用線不要)/2026年度より募集量を1σ相当へ削減。応動30秒・継続要件なし。(平常時対応に特化)。オンライン一次より要件が大幅に緩和。
❸ 参入障壁の低減
オフライン監視(事後データ提出)、専用線不要。これにより初期コストを大幅に削減可能。
参入可能リソース
・1MW未満の発電機をアグリゲート
・1MW以上の蓄電池(BESS)
・需要設備(DSR)
小規模リソース・蓄電池の参加促進
通信/監視要件
・事後提出(専用線不要)
・応動30秒以内・継続要件なし(2025年度)
・評価方法・判定基準は公開資料参照
スカウティング枠は専用線コスト等の参入障壁を下げる一方、周波数品質を守るため調達上限や評価方法を設けて段階的に導入。調達上限は品質確保の観点から設定(詳細はOCCTO資料)。
投資家向けポイント
2025年度:応動30秒以内・継続要件なし(平常時対応)/専用線不要・事後データ提出。小規模BESSやDRの参入促進が目的。
二次調整力①・②の実務ポイント
❶ 二次①(S-FRR)― LFC信号への素早い追従
中央給電所からのLFC信号(0.5秒~十数秒)に自動追従し、一次調整力の負担を回復するための調整力。
❷ 二次②(FRR)― EDCによる運転点調整
経済負荷配分(EDC)や5分指令で運転点を調整し、数十分スケールの偏差を吸収するための調整力。
❸ 2026年度の変更点(予定)
→週次商品の30分化・前日化に移行(予定)。より柔軟な調達が可能になります。
二次調整力 対応する変動
二次① (S-FRR) 短周期変動に対応
二次② (FRR) 長周期成分の偏差に対応
実務ポイント
・二次①と二次②は共に最低1MWから入札可能
・二次②は簡易指令システムも利用可能
・監視間隔は二次①の方が厳格(1〜5秒)
・精算の詳細は→ P.7「精算の仕組み」を参照
| 項目 | 二次調整力①(S-FRR) | 二次調整力②(FRR) |
|---|---|---|
| 信号・制御方式 |
LFC信号に自動追従 (0.5秒〜十数秒) |
EDC(経済負荷配分) または5分指令 |
| 応動時間 | 5分以内 | 5分以内 |
| 継続時間 |
30分以上 (注)2026年度に『入札・約定ブロック』を30分化予定 |
30分以上 (注)2026年度に『入札・約定ブロック』を30分化予定 |
| 監視・回線 |
オンライン(1〜5秒) 専用線必須 |
専用線または簡易指令 (監視1分・指令5分) |
三次調整力①・②の実務ポイント
❶ 三次調整力①(RR)の特徴と用途
ゲートクローズ以降に生じる需要予測誤差・再エネ予測誤差、電源脱落に対応する広い守備範囲をカバー。対象は「FIT特例に限定されない」のが特徴。
❷ 三次調整力②(RR-FIT)の特徴と用途
FIT特例①・③に起因する再エネ予測誤差に特化した商品。前日に調達し、30分単位で運用。効率的な調達で価格抑制を実施(2024年度~)。
| 項目 | 三次調整力① | 三次調整力② |
|---|---|---|
| 対象誤差 | 需要予測誤差・再エネ予測誤差・電源脱落 | FIT特例①・③の再エネ予測誤差のみ |
| 応動時間 | 15分以内 | 60分以内(2025年度より45分→60分に変更) |
| 継続時間 | 3時間ブロック → 2026年度に30分化予定 | 30分(入札・約定単位も30分) |
| (注)2026年度に『入札・約定ブロック』を30分化予定 | ||
| 監視・回線 | オンライン(専用線または簡易指令システム) | |
実務ポイント
・三次①:2022年4月~市場取引開始
・三次②:2021年4月~市場取引開始(最初の商品)
・両商品とも最低入札量1MW
入札はアグリゲーションも可能(1MW未満のリソース集約)
三次②特有の取り組み
・効率的調達:前日市場1σ+余力活用で3σを確保(2024年度~)
・使用率公開:実際の運用状況をEPRXサイトで透明化
・取引実績分析:事業者が参入戦略を立てやすい環境整備
三次①は「守備範囲が広い」のに対し、三次②は「FIT特例由来の誤差に特化」という違いがあります。精算の仕組みやΔkW・kWh構造、上げ/下げ調整力の取扱いについては、P.7「精算の仕組み」をご参照ください。
1MWルールとアグリゲーション(1MW以上は原則ユニット単独入札)
参入条件と応札単位の実務ルール
*最低入札量は全商品1MW。アグリゲーションにより複数地点の合算で参加可能。
最低入札量と応札ルール
・最低入札量は全商品1MW(= 1,000kW) 。単体で満たせない場合はアグリゲーションで束ねて参加可能。
・1MW以上のリソースは「原則、ユニット単位で入札」(例外的に計量単位入札を希望する場合は厳格条件あり)。
・アグリゲーションは「単体で1MW未満のリソース」どうしを束ねて1MW以上にする方式。
参入方法と実務手順
❶ 参入前準備
取引会員になるための資格審査を実施(契約期間は1年間、自動更新(取引規程))。約款同意、財務情報提出、システム接続試験が必要。
❷ リソース要件と計量体制
各商品の応動・継続要件を満たす設備が必要。商品に応じた計量器(専用計量器または既設計量器)と、2026年度に向け全商品30分化(予定)に備え、30分値の計量体制を必須化。
❸ 通信環境と入札フロー
商品に応じた通信方式(専用線・簡易指令システム)を選択。入札は週間(3時間ブロック)・前日(2026年度より前日化予定)の二段階で実施、約定結果に応じて応動。
審査・認定フロー
1. 取引会員資格(審査・契約)
2. システム接続(MMS)
3. 電源等情報の登録
4. 入札・応動・精算
必要書類
・性能確認試験結果
・供出可能量の根拠資料
・計量器・通信設備の仕様書
・運転実績データ
アグリゲーションによる参入は、アグリゲーターが複数の小規模リソース(1MW未満)を束ねることで可能です。その場合、各リソースの応動検証や計量値の収集方法についても事前に確認が必要です。
2025年以降の制度・運用変更点
❶ 週次商品の30分化:2026年度に完了予定(三次②は2025/03/14受渡から30分・前日)
週次商品(一次・二次①②・三次①)の入札・約定ブロックは段階的に30分化が進行中。三次②は2025/03/14受渡以降、30分ブロック運用済。一次・二次①②・三次①の30分化は2026年度を目標に進行中。
❷ 前日取引化:三次②は完了、他は2026年度予定
三次②は2025年3月14日受渡分から前日取引化完了済。他の週次商品(一次・二次①②・三次①)についても段階的に前日取引化を検討中。スポット市場との連携強化が狙い。
❸ 一次オフライン:応動30秒・継続要件なし(2025年度)
(一次オフライン監視)応動30秒以内・継続要件なし(2025年度)。平常時対応に特化し、専用線不要・事後データ提出。小規模BESSやDRの参入促進が目的。
❹ 売買手数料単価の設定
売買手数料単価:0.06円/ΔkW・30分(2026年度)。市場取引における手数料水準が明確化され、コスト計画が立てやすくなります。
変更スケジュール(年別整理)
◆2024年度
・週次3時間ブロック(一次〜三次①)/三次②は前日
◆2025年度
・三次②は前日・30分ブロック(2025/03/14受渡以降実施済)
◆2026年度
・全商品30分化・前日取引化の完了予定
実務ポイント
・三次②は前日・30分ブロックで運用中
・週間商品の30分化は段階的に進行中
・手数料は0.06円/ΔkW・30分(2026年度)
・下げΔkWは当面、市場調達対象外
・新規参入者は最新情報の随時確認を推奨
応札不足対応として、揚水発電の市場活用や一次・二次①アセスメント緩和(0.01以下)などの対策も実施。下げΔkW(下げ調整力)は当面、市場での調達対象外(EPRX FAQ参照)。新規参入者は要件変更や取引ガイドを随時確認してください。要件・価格・手数料は更新されるため、最新版を確認(特に事前着手資料)。数値はEPRX公開資料の最新版に基づく。
制度移行の方針:2026年度に全商品の前日化・30分化を目指す整理。詳細はOCCTO資料「2026年度の前日取引化に向けた課題整理について」を参照。
2026年度以降の制度変更のポイント(案ベース)
※本ページの内容は2025年11月時点の審議会資料(第108回制度検討作業部会等)に基づく整理です。 実施時期や詳細な設計は今後変更される可能性がありますので、最新の公式情報をご確認ください。
❶ ΔkW上限価格の引き下げ・統一
一次・二次①・複合 19.51円 → 15円 / ΔkW・30分 [統一案]
三次②:引き続き「上限価格なし」
目的:調整力調達コストの抑制と、商品間の極端な価格差の是正
❷ 募集量の考え方(見直し+随時募集)
三次②:すでに必要量を「1σ相当」まで削減済み。
一次〜三次①:過大な募集を避けるため募集量を1σ相当へ削減。
不足時の対応:前日市場や当日運用での「随時募集」を導入する方向性。
❸ 事業計画へのインパクト(BESS視点)
「調整力一本足打法」のリスク増大
上限価格の改定(15円案)と募集量の抑制により、従来の収益モデルが変わります。
❹ 逸失利益(機会費用)の算定基準の変更
全商品の前日取引化に伴い、一次~三次①の入札価格算定に用いる「機会費用」は、時間前市場(JEPX)の想定価格を基準とする方式へ移行します。
今後の対策キーワード
収益源のマルチ化
ΔkWに加え、JEPXアービトラージや容量市場の組み合わせが必須に。
B種電源の活用
O&Mやアグリ費用を回収するため、B種設定や長期契約の検討が重要。
背景:なぜ変わる?
再エネ導入拡大に伴い調整力ニーズは高まる一方、国民負担抑制の観点から「効率的な調達」が求められています。市場価格の高止まりを防ぎつつ、必要な量を確保するバランス調整が進められています。
まとめと次のアクション
❶ EPRX市場活用の実務ポイント総括
商品特性を理解する:
各調整力商品の特性(応動時間・継続時間・監視要件)を踏まえた参入判断
リソース選定:
既存設備活用と新規投資の切り分け(蓄電池・DR・自家発等の適材適所)
アグリゲーション:
1MW未満リソースを束ねる場合の計量・監視体制の整備
❷ 2025年以降の参入・活用戦略
一次調整力の特性理解:
一次は"待機報酬のみ"の認識で計画を立てる(kWhはインバランス側で別枠)
制度変更への対応:
30分化・前日取引化・一次オフライン要件緩和等の変更点への準備
複数商品への応札:
相場と設備特性に応じた商品選択・複合商品への応札戦略
中長期的視点:
同時市場化(2028年度以降)に備えた設備運用・制御の高度化
❸ 問い合わせ先・情報源
EPRX公式サイト:www.eprx.or.jp
「売買手数料単価」ページ:0.06円/ΔkW・30分(2026年度)
EPRX「2024年度の取引実績について」, 2025-06-19, 参照 2025-10-18
EPRX「料金算定諸元 Ver.1.9/1.5」, 2025-06-16, 参照 2025-10-18
EPRX「売買手数料単価(2025年度)」, 2025-02-07, 参照 2025-10-18
OCCTO 需給調整市場関連資料, 2025-03, 参照 2025-10-18
実務者のための重要資料
・需給調整市場の商品要件(第5版)
・取引ガイド・取引規程
・アセスメント・ペナルティ要綱
・事前審査要綱
入札前に確認すべき最新版資料
要件・価格・手数料は更新されるため、最新版を確認(特に上限価格告知)
次のステップ
1.リソースの技術要件適合性確認
2.市場参加資格の取得手続き
3.事前審査の申請・実施
4.取引会員登録・システム接続
5. 試験入札・本格参入
監修者
青栁 福雄
Aoyagi fukuo
Energy Link 取締役 COO
系統運用・需要側制御・スマートグリッド分野の実務家。東京電力にて変電所の建設・運用・保守および大口顧客向けエネルギーソリューションに従事。マイエナジー出向時には2002年日韓ワールドカップの複数会場および国際放送センターの電源責任を担当。東光高岳では執行役員としてスマートグリッド事業を統括し、NEDO事業等に参画。2019年にEnergy Linkを創業し、分散型電源の導入・利活用を推進。
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