作成日:2025.10.19
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初級
市場・価格
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#容量市場
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#市場(総称)
※本記事は、作成日または最終更新日時点で公表されている制度情報・数値・資料に基づいて作成しています。
容量市場(OCCTO)とは?
BESSの参加条件と収益の見方を、図解でやさしく解説
容量市場は将来の供給力(kW)をオークションで前倒し確保し、約定価格は需要曲線と供給曲線の交点で決まります(エリア分断時は1.5倍上限あり)。 BESSは期待容量1,000kW以上・放電3時間以上で安定電源として参加でき、落札対価は月割(12分割)で支払われます。
CONTENTS目次
要点(3行)
・容量市場は電力量(kWh)ではなく供給力(kW)の市場。将来不足を前に手当てします。
・OCCTOがT-4(4年前)にメイン入札、必要に応じてT-1で追加入札。
・BESSは「1,000kW以上×3時間」で安定電源として参加可。未達・不遵守は約款にもとづくペナルティが発生。
BESS事業者が押さえるべき参加条件
「期待容量1,000kW以上かつ放電3時間以上」が安定電源としての登録要件。
これを満たさないBESSは安定電源では登録できません。
出典: OCCTO「容量市場メインオークションの概要について」
| 用語 | 意味 | 重要性 |
|---|---|---|
| kW | 発電できる力(供給力) |
容量市場で取引 |
| kWh | 発電した量 | JEPX等で取引 |
| T-4/T-1 | 実需給の4年前/1年前 | オークション時期 |
容量市場の目的と基本
基本設計
:実需給の4年前(T-4)に、将来必要な供給力(kW価値)をオークション形式で一括確保する市場制度
目的
:電力自由化・再エネ拡大の環境下でも、中長期的な供給力を確保し、電源投資の予見性を担保
必要性
:再エネ拡大による火力発電の収益悪化(稼働率低下)
老朽火力の設備更新投資の停滞(投資回収リスク増大)
自由化で投資の予見性低下(kWh市場だけでは投資回収困難)
対象
:供給力を提供できるすべての電源等(発電設備、BESS、DR等)
kWとkWhの違い
| 概念 | 意味 | 市場 |
|---|---|---|
| kW | 発電できる能力(供給力) |
容量市場(将来の供給力) |
| kWh | 実際に発電した電力量 | 卸電力市場(JEPX等) |
経済合理性のある制度設計
容量市場は将来の「kW価値」に対して現時点で対価を支払い、発電投資の予見性を高めます。これにより電力料金の長期安定化が期待でき、需要家にもメリットをもたらします。
「タクシー」で理解する容量市場
・JEPX(kWh市場)は「乗った分だけ支払う」タクシー料金(走行距離に応じた変動費)に相当
・容量市場(kW市場)は「タクシーが必要な時に確実に来るよう」事前に確保するための「待機料」(固定費)に相当
・タクシーが少なくなり過ぎると、必要な時に捕まらない(電力不足)恐れがあるため、適切な台数(供給力)を事前に確保する仕組み
容量市場の全体像:4者関係とお金・kW価値の流れ
4者の役割と関係性
kW価値の流れ(供給力確保の仕組み)
義務履行の基本条件:停止上限8,640コマ(180日相当)、ペナルティ上限は年間110%・月間18.3%
資金の流れ(支払いと費用転嫁)
基本精算ルール:拠出金はH3需要按分、契約金額は実需給年度中に12分割月次支払(約款第7条3項)
出典・参考資料
容量確保契約約款(2025年7月改定)
第7条3項(月割12分割支払い)、第17~20条(ペナルティ規定)
容量拠出金業務マニュアル(OCCTO、2024年10月改定)
H3需要/ピークシェア算定方法
詳細説明
H3需要とは、夏季ピーク時(7~9月)の上位3日平均値。ピークシェア按分で各小売事業者の負担額を決定。
OCCTO公式サイト
https://www.occto.or.jp/capacity-market/index.html容量市場関連制度詳細
https://www.occto.or.jp/market-board/index.html容量市場の流れ(T-4/T-1/実需給)と精算のしかた【制度】
市場タイムライン(制度)
価格決定の仕組み
OCCTO>各種手続き>容量市場関係の情報・手続き>容量市場 説明会思料・動画>対象実需給年度:2029年度>
容量市場メインオークション制度説明思料:
https://www.occto.or.jp/assets/market-board/market/oshirase/2025/files/20250709_youryou_seidosetsumei.pdf約定価格(Clearing Price)
:需要曲線と供給曲線の交点で決定。市場分断時はエリア別価格が設定。
エリアプライス上限
:隣接エリアの1.5倍を上限とする規定が適用(OCCTO募集要綱)。
最新結果(2028年度)
:約定総額約1.85兆円(過去最高)、平均価格13,600円/kW、約定量136GW
支払いと義務
| 項目 | 内容 | 根拠・詳細 |
|---|---|---|
| 支払方法 | 月割12分割で支払い(1/12ずつ) |
容量確保契約約款第7条3項に規定 |
| 計画停止 | 年間8,640コマまで(180日相当) | 計画停止可能コマ数の上限(第17条) |
| ペナルティ上限 | 年間:110% / 月間:18.3% | 契約金額に対する未達時のペナルティ上限率(第19〜20条) |
| Z=90時間 | 低予備率・供給指示未達の算定に使用 | OCCTO「容量市場メインオークション募集要綱」P.55 |
出典:OCCTO「容量確保契約約款」(2025-07改定)、「容量市場メインオークション募集要綱」(2025-03-28改定)、
「2028年度メインオークション約定結果」(2025-01-29公表)
容量市場参加要件早見表【参加者】
安定電源
BESS(蓄電池)参加要件
・期待容量1,000kW以上が必須(1MW=1,000kWの設備容量)★送電端=PCS出力から補機電力等を差し引いた実効kW
・放電時間3時間以上 の継続供給が要件(3h未満は認められない)
・監視制御システム:遠隔監視・制御機能の整備が必要
・登録容量:期待容量(送電端)で算定
・メンテナンス管理:計画停止と不具合停止の区別管理
・調整機能(LFC):任意の付加価値(必須ではない)
メインオークション(T-4)時点で1,000kW未満または3時間未満のBESSは参加不可
発動指令電源
DR(需要抑制)参加要件
・1,000kW以上 の供給力(小規模リソースの アグリゲーション可)
・年12回×3時間=最大36時間 の発動に対応可能であること
・夏・冬の実効性テスト必須(T-1 年度に実施、結果提出が求められる)
・登録単位:電源等リストに基づく登録(アグリゲーション可)
・発動応答:指令から3時間以内に出力変化を実現
・計測体制:発動実績の証明に必要なデータ収集体制
追加オークション(T-1)の実効性テスト不合格の場合は参加不可
参加者共通のリクワイアメント(義務要件)
供給指示への対応
低予備率時(Z=90時間)の指示に従う義務あり
計画停止枠
最大8,640コマ(180日相当) まで許容
ペナルティ上限
年間110%・月間18.3%の上限あり(約款規定)
維持管理義務
容量を適切に維持する義務(監視・管理)
支払い方法
契約金額は月割12分割で支払われる
参加スケジュール
T-4 メインオークション、T-1 追加オークション
よくある誤解Q&A・4つの重要ポイント
Q
「落札=何もしなくても収入」?【約款第19〜20条】
不可。落札後も実効性テスト・低予備率対応・供給指示の義務あり。
義務未達の場合は経済的ペナルティが発生。年間上限は契約金額の110%、月間18.3%まで。
Q
契約金は一括?【約款第7条3項】
不可。月割12分割で支払い。年間契約金額を実需給年度の12ヶ月で均等分割。
「容量確保契約に基づく年間契約金額は、実需給年度における当該容量提供事業者の容量確保契約容量に応じて、実需給年度の各月に均等に分けて支払う」
Q
FIT電源は容量市場に参加できる?【募集要綱P.55】
原則として不可。FIT電源は投資回収の仕組みが既に確立済み。
FIP電源については、一定の条件下で参加可能。詳細はOCCTO募集要綱「第6章 応札方法 1. 応札方法」を参照。
Q
価格は全国一律?【募集要綱P.55】
エリアにより異なる場合あり。分断時は上限=隣接エリアの1.5倍まで。
市場分断が発生した場合、連系線の制約により、エリアごとに約定価格が決定。隣接するエリア価格の1.5倍を超えないよう調整される。
重要確認事項
・BESS参加要件:期待容量1,000kW以上かつ放電3時間以上
・支払方法:月割12分割 【約款第7条3項】
・DRの対応時間:年12回×3時間=最大36時間
・計画停止可能上限:8,640コマ(180日相当)【約款第17条】
出典:OCCTO「容量確保契約約款(2025年7月改定)」、 OCCTO「容量市場メインオークションの概要について」
関係者別:何が起きるか
小売電気事業者
費用負担と算定方法
・容量拠出金の負担が発生(2024年度から実需給年度まで)
・H3需要(ピークシェア)で按分され、OCCTOが毎月請求
・2028年度は約1.85兆円規模の市場
経営影響
・料金への転嫁是非の判断が必要
・長期契約への影響の検討
・年間固定費として計上(約款第29条に基づく支払義務)
発電事業者
収入構造
・4年先の収入確定による投資予見性向上
・月割12分割で受領(約款第7条3項)
義務とリスク
・供給力提供義務と停止計画上限8,640コマ(180日相当)
・未達ペナルティ上限:年間110%/月間18.3%
・詳細要件は →p.7参照
BESS/DR事業者
収益構造と算定
・kWh収入と併せた複層収入構造の実現
収益 = 契約単価 × 容量 − ペナルティ
・月割12分割で受領(1MW×3h・2MW×4h試算例あり)
実務上のポイント
・BESS:1,000kW×3h以上で安定電源として参加
・DR:年12回×3時間(最大36時間)の対応
・両者とも実効性テスト(夏・冬)必須
・詳細要件は →p.7参照
※容量確保契約約款に基づく月割12分割の支払いとペナルティ上限(年110%/月18.3%)は全参加者に共通
※一次情報源:OCCTO「容量確保契約約款」第7条3項(月割支払)、第17~20条(ペナルティ)、「容量拠出金業務マニュアル」(H3需要按分)
今後の課題・展望
市場の成熟と最適化
市場分断やマルチプライス適用の増加を踏まえ、エリア間価格差の適正化と統一市場としての機能強化が課題。
再エネ主力化との両立
変動性再エネの増加に伴い、容量市場の評価手法や調整係数の精緻化が必要。蓄電池等の参入促進も重要課題。
投資シグナルの強化
供給力の新規投資を促すため、容量市場と長期脱炭素電源オークションの相互補完関係の確立と明確化。
国際的整合性
諸外国の容量メカニズムとの比較分析に基づく継続的な制度改善と透明性の確保。
調整機能の高度化
電源の調整機能に対する適切な評価・インセンティブ付与の強化。再エネ増加に伴う調整力確保のための容量市場の役割拡大。
脱炭素化との連携
2050年カーボンニュートラルに向け、容量市場が化石電源の延命ではなく、脱炭素電源への移行を促す仕組みへの進化。
公正な負担と競争促進
大手・新電力間の公平性確保と市場支配力の監視強化。容量拠出金の透明性向上と需要家への適切な情報提供。
長期脱炭素電源オークションとの関係
容量市場が4年先の1年間の供給力を確保する一方、長期脱炭素電源オークションは新規投資向けに最長20年間の収入を保証。両制度の連携により、脱炭素化と供給力確保を同時に実現する方向性。
まとめ・参考資料
容量市場の役割
将来の供給力を事前に確保し、電力の安定供給を実現する重要な制度です。
仕組み
OCCTOが運営する4年先の「供給力(kW価値)」オークション。小売電気事業者の負担金を原資に、発電事業者等に対価を支払います。
最新動向
2028年度向け最新オークションでは約定総額1兆8,506億円と過去最高額。エリア間の価格差も拡大しています。需給逼迫懸念から価格上昇傾向が続いています。
将来展望
長期脱炭素電源オークションとの連携、再エネ導入拡大に伴う調整力確保が今後の重要課題です。
覚えておくと便利な用語
-
供給力(kW)
発電"できる力"。電力量(kWh)と混同しないこと
-
容量拠出金
小売が負担する費用。算定・支払いスケジュールはOCCTOが告示・周知
-
容量確保契約金額
落札側が受け取る対価。履行義務やペナルティの仕組みあり
-
メインオークション
4年先の供給力を大枠で確保する中核オークション
-
追加オークション
直前になって判明した不足・余剰の微修正用オークション
-
約定価格
(Clearing Price)需要曲線と供給曲線の交点で決まる価格。エリアプライス上限規定(1.5倍)あり
-
長期脱炭素電源
オークション低炭素で供給力を持つ電源の新規投資を促す長期枠組み
参照元・一次資料
OCCTO|容量市場 (制度全体・結果・FAQ への入口)
https://www.occto.or.jp/market-board/market/OCCTO|容量拠出金 (小売の負担と根拠法)
https://www.occto.or.jp/capacity-market/youryoukyoshutsukin/index.htmlOCCTO|約定結果 (2028年度)
https://www.occto.or.jp/marketboard/market/oshirase/2024/20250129_youryouyakujokekka_kouhyou.html資源エネルギー庁|容量市場について (制度趣旨とkW価値の位置づけ)
https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/youryou.html資料版数:第1.2版 | 発行日:2025-10-01 | 参照日(ISO 8601):2025-10-19
最新の制度情報はOCCTOの公式サイトをご確認ください。
監修者
青栁 福雄
Aoyagi fukuo
Energy Link 取締役 COO
系統運用・需要側制御・スマートグリッド分野の実務家。東京電力にて変電所の建設・運用・保守および大口顧客向けエネルギーソリューションに従事。マイエナジー出向時には2002年日韓ワールドカップの複数会場および国際放送センターの電源責任を担当。東光高岳では執行役員としてスマートグリッド事業を統括し、NEDO事業等に参画。2019年にEnergy Linkを創業し、分散型電源の導入・利活用を推進。
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