作成日:2026.01.06
更新日:—
初級
市場・価格
容量市場:制度連絡
#OCCTO
#制度・ルール文書
#市場(総称)
#容量市場
#指標_約定価格(クリアリング)
※本記事は、作成日または最終更新日時点で公表されている制度情報・数値・資料に基づいて作成しています。
長期脱炭素電源オークション(脱炭素オークション)とは?
“20年kW収入”の仕組みと、還付・リスクをやさしく整理
買うのはkW(出せる力)
発電量(kWh)とは別モノ。将来の供給力を確保する制度。
落札=ゴールではない
供給開始・要件遵守・監視対応までが事業の本番。
入金は「満額」ではない
支払金額 = 容量確保契約金額− (還付/控除 + ペナルティ等)
CONTENTS目次
要点(3行で先取り)
この制度の「ここだけ」3ポイント
POINT 01
買うのはkW(出せる力)
発電量(kWh)とは別モノ。
POINT 02
入金=契約金額 −
(還付+ペナルティ等)
「満額入る前提」は危険。
POINT 03
落札がゴールではない
20年の実行管理(工期・要件・監視対応)が本番。
kW=瞬間的に出せる出力(供給力)
kWh=実際に発電・放電した量(電力量)
背景:なぜ必要?
自由化による「投資の不確実性」
市場価格の変動リスク
電力自由化で市場競争が進み、電力価格が動くようになったため、収益の見通しが立ちにくい。
大型電源への投資停滞
特に巨額の建設費がかかる大型の脱炭素電源は、投資回収の予見性が低く、新規開発に踏み切りにくい状況に。
容量メカニズムの整備
「供給力(kW)」への価値付け
「電気の量(kWh)」だけでなく、「将来の供給力(kW)」自体に価値を付け、対価を支払う仕組みを整備。
長期脱炭素電源オークション
長期投資向けに位置づけられた制度。20年間の収入予見性を付与し、脱炭素電源への投資を後押しする。
出典:資源エネルギー庁
用語解説
・容量市場:将来必要な供給力(kW)を市場で確保する仕組み。電力量(kWh)の市場とは異なる役割を持つ。
基本:kWとkWh(蛇口の例)
[CAPACITY]
kW キロワット = 蛇口の太さ
[意味]
一瞬で出せる電気の力。
[役割]
停電を防ぐには「必要な瞬間に出せる力」が重要になります。
[ENERGY]
kWh キロワットアワー = 水の量
[意味]
実際に使った電気の量。
[役割]
電気料金や売電の多くはここで動きます。
ここがポイント!
長期脱炭素電源オークションは、将来の「kW(設備能力)を確保するための予約契約」です。
実際に発電した「kWh」の売上(売電)とは別に、kWを出せる状態を維持する対価(容量収入)が支払われます。
約定:落札が決まり、条件が確定すること
制度の流れ(スケジュールは断定しすぎない)
1
募集要綱公表
募集量・上限価格などの条件提示。
2
参加登録・審査
事業者・電源情報・期待容量などを登録・審査。
3
応札(入札)
価格・容量等の情報を登録して入札。
4
落札決定(約定)
募集要綱で定める方法に従い、応札価格等をもとに決定。
5
容量確保契約締結
OCCTOと契約締結。
原則20年間の長期契約へ。
6
建設・運用→精算
供給開始後、制度適用期間に支払・控除(還付)等の精算へ。
タイムラインのイメージ
重要:監視・公表・用語
[監視]
応札受付終了後、監視等委による応札価格の監視が行われる。
[公表]
約定結果:
募集要綱・業務マニュアルに従うスケジュール(例:受付終了から約3か月後を目途に公表(年度をまたぐ場合あり))。
ロードマップ:
応募時に様式として提出し、落札後は遵守が求められる(公表の扱いは年度・公表資料で確認)。
[期間]
制度適用期間=供給力提供開始年度の翌年度から原則20年(例外あり)。
参照:
容量市場業務マニュアル(長期脱炭素:参加登録・応札・容量確保契約書の締結編)、長期脱炭素電源オークション募集要綱、長期脱炭素電源オークションの制度詳細について(応札年度:2025年度)
参加資格・対象電源(正確な入口と全体像)
参加主体(入口の要件)
・国内法人等
日本法に基づき日本国内に本店等を持つ法人であること。
・コンソーシアム
落札後に国内法人を設立する前提のコンソーシアムも含まれ得ます(詳細は募集要綱で定義)。
・対象エリア
日本全国(※沖縄地域およびその他地域の離島を除く)。
対象電源の全体像(俯瞰)
・脱炭素電源(新設・改修)
太陽光、風力、水力(揚水含む)、地熱、バイオマス、原子力(安全対策等含む)
・火力の脱炭素化
水素・アンモニア(専焼/混焼)、CCS付き火力など
・蓄電池・貯蔵系
蓄電池(系統用等)、揚水式水力、長期エネルギー貯蔵システム等 ※要件あり
・特例:LNG専焼
特例としてLNG専焼火力(新設・リプレース)は条件付きで対象となり得る
(※脱炭素化ロードマップ遵守等のリクワイアメントあり)
FIT/FIPに関わる電源は、募集要綱のルールに従い“参加可能設備容量(送電端)”の算定で控除対象となる容量があり得ます。
→“設備まるごと不可”と決めつけず、どの容量が参加可能かを募集要綱で確認。
LNG専焼の扱い
一定期間に限って対象となる整理があります。
供給力提供開始日から10年後までの間に、脱炭素化に向けた対応(混焼等)を開始する計画(ロードマップ)の提出等が求められます。
二重支援の回避
・補助金との併用
重要:補助金を受けている電源は、二重支援回避のため還付(控除)等の整理があります。詳細は当該年度の募集要綱・約款で条件を確認してください。
・FIT/FIP
再エネ等を支援する制度(重複支援回避のため容量の扱いに注意)。
詳細確認
詳細な要件や最新の整理については、必ず最新の「募集要綱」をご確認ください。
一次情報(募集要綱)を参照
収益の基本形(契約の骨格)
1. 契約期間と入金期限日
制度適用期間
原則 20年間 例外・選択肢あり
原則、「供給力提供開始年度の翌年度」から開始
例外:供給開始が2025年度の場合→2027年度から開始
選択:希望により20年超を選択可能(1年単位で延長設定など)
例:供給開始2030年度 → 2031/4/1〜2051/3/31
制度適用期間
対象実需給年度 4月1日〜翌3月31日
支払月(入金期限日が属する月):対象実需給年度の9月 〜 翌年8月
※約款準拠:対象実需給年度の途中から支払月(請求月)が設定されています
入金期限日:原則、各月の最終営業日(容量精算日)
2. 支払金額の計算式(約款準拠)
[容量確保契約金額(各月)] ー [控除額(経済的ペナルティ)(還付額)(契約解除ペナルティ(該当時))] = [支払金額(実際に振り込まれる額)]
投資家が落としやすい点
契約単価は固定ではなく、物価・金利変動等で毎年度補正されます。
(実質価値を維持するための仕組み)
制度適用期間:容量収入の対象となる期間(原則20年)
支払金額:契約金額から控除額(ペナルティ・還付等)を差し引いた、実際に入金される額
他市場収益の還付
支払金額(受取額)の考え方
[受取(支払金額)] ≒ [契約金額] ー [還付] ー [ペナルティ]
他市場収益(約款で定義:他市場収入から可変費等を控除した値を基礎)を得た場合、その一部は事後的な還付額として算定され、支払金額から控除されます。
※メイン/追加オークションとの重複は原則制限があります(詳細はP9参照、募集要綱・業務マニュアルで確認)。
他市場収益還付の仕組み(3段階の帯) [約款に基づく定義]
還付は約款で定義された「他市場収益の帯(帯①〜③)」ごとに、以下の還付率が適用されます。
※帯の境界(しきい値:A・B・C)は約款の定義に従います(具体の数値・しきい値は応札年度の約款を参照)
簡単例 [容量収入:年10億][他市場:年4億] → 帯ごとに還付率適用 約1分で理解
CF(キャッシュフロー)での鉄則
事業計画の収益は「満額の容量収入」ではなく、還付(控除)を見込んだ“実際の入金”基準で置く必要があります。
確認ポイント
・還付(控除)後の入金ベースでCFを作成
・自社電源の還付区分を正確に把握
「売電収入の○割が一律で引かれる」ではなく「定義された他市場収益に対して、帯に応じて計算」されます。
用語説明
還付:他市場収益の一部を差し引く仕組みのこと(“返金”と決めつけず、控除として理解する)。
容量市場(メイン/追加)との関係
結論:同じkWの二重確保は不可(原則と例外あり)
制度適用期間中は、同一の供給力(kW)でメイン/追加オークションへ参加することは原則として制限されます。
ただし、増設分・非脱炭素部分・初年度など、例外的に参加可能なケースがあります。詳細は募集要綱・業務マニュアルで判断してください。
原則(制度適用期間中) [メイン/追加への参加は一次情報で要確認]
長期脱炭素で落札した電源の対象容量部分について
制度適用期間中は、原則としてメインオークションおよび追加オークションとの重複参加が制限されます。二重取り防止の観点から、別制度側との調整(参加可否の整理等)が必要になる場合があります。
「※長期脱炭素の容量確保契約は、約款上、契約期間中の市場退出は原則認められません。」
イメージ
[長期脱炭素]→[ 要調整]
※同一容量の重複確保回避
詳細確認先:[業務マニュアル][該当章募集要綱 該当条]
例外(参加可能なケース・前提) ※募集要綱の整理に基づく例外
例外 1
増設などで容量が増える場合
既設設備に対して増設を行い、全体の供給力が増加する場合。
[増えた部分(増設分)は参加可能]
例外 2
既設火力の改修案件
既存の火力発電を改修し、一部のみ脱炭素化する場合。
[脱炭素化されない容量も参加可能]
例外 3
供給力提供開始年度
制度適用期間は「供給力提供開始年度の翌年度」から開始のため、初年度は対象外。
[初年度は参加可能となり得る]
メインオークション
容量市場の中心となるオークション。将来の供給力を確保する主要な仕組み。
追加オークション
メインオークション後に、追加で供給力を確保する必要が生じた場合に行われる仕組み。
リスクと回避策(4つの落とし穴)
制度は「落札=ゴール」ではなく「20年の実行」が本番です
工期遅延/要件未達
還付(控除)/見落とし
書類不備/ルール違反
監視による応札価格修正
蓄電池(BESS)チェック
BESSは対象になり得ますが、要件は年度ごとに定義されます。
以下は「応札年度2025の募集要綱・ガイドライン」に示された具体的要件です。
※例示ではなく、2025年度の一次情報に基づく必須要件となります。
規模要件(入口)
・参加可能設備容量(送電端)が3万kW以上。
・送電端とは、所内消費を差し引いた「系統へ供給できる正味の容量」を指します。
運転継続
・1日1回以上・連続6時間以上の安定供給が可能であること。
・短時間(2-3時間)のピークシフト用ではなく、長時間供給力が要件となります。
同時落札条件
・同一場所・同一接続点の複数電源を束ねる場合は、条件付き同時落札ルールの対象。
・原則として各電源ごとに技術要件を満たす前提で考える必要があります。
セル製造国・地域(サプライチェーン)
・見積書等に「セルを製造する国・地域」を記載(複数国なら最大比率の国・地域)。
・国別上限など、特定国・地域への依存を抑えるルールがある(例:1国・地域あたり30%未満)。
・セル種別が変わるような変更など、内容によっては認められない取扱いがある(募集要綱・FAQ確認)。
まとめ:誤解対策・チェックリスト・出典
よくある誤解 (Q&A)
Q
落札したら、売電収入も全部手元に残る?
原則20年の「kW収入」を見込む制度です。ただし、①他市場収益の還付(控除)、②未達によるペナルティ、③契約条件未充足による契約解除などで、実際の入金は変動します。
Q
還付率は一律9割?
一律ではなく、約款で定義された“帯(帯①〜③)”に応じて段階的に決まります。具体の数値・しきい値は応札年度の約款を確認してください。
Q
監視で価格が直されたら落札は無効?
「無効」と決めつけないのが安全です。監視で価格の減額修正が起こり得るため、修正後単価も想定して計画します。
Q
支払はいつ入る?(対象実需給年度との関係)
対象実需給年度(4/1〜翌3/31)の「9月〜翌年8月」が支払月です。入金期限日(容量精算日)は原則、各月の最終営業日です。
公開前チェックリスト
□ 募集要綱・約款が最新か(応札年度が合っているか)
□ 用語(制度適用期間/実需給年度/支払月)を正確に使っているか
□ CFは「支払金額(控除後入金)」で組んでいるか
□ BESS要件は当年要綱の値で確認したか
一次情報出典 [参照日:2026-01-06]
[エネ庁]2025-08-27
長期脱炭素電源オークションガイドライン
https://www.enecho.meti.go.jp/category/electricity_and_gas/electric/summary/regulations/choukigl_20250827.pdf[OCCTO]2025-09-03
2025-09-03
https://www.occto.or.jp/assets/marketboard/market/jitsujukyukanren/files/250903_boshuyoukou_long_2025.pdf[OCCTO]2025-09-03
容量確保契約約款
https://www.occto.or.jp/assets/marketboard/market/jitsujukyukanren/files/250903_kakuhokeiyaku_long.pdf[OCCTO]2025-10-01
容量市場業務マニュアル(参加登録・応札・契約締結編)
https://www.occto.or.jp/assets/marketboard/market/jitsujukyukanren/files/251001_longax_gyoumumanual_ousatsu2025.pdf監修者
青栁 福雄
Aoyagi fukuo
Energy Link 取締役 COO
系統運用・需要側制御・スマートグリッド分野の実務家。東京電力にて変電所の建設・運用・保守および大口顧客向けエネルギーソリューションに従事。マイエナジー出向時には2002年日韓ワールドカップの複数会場および国際放送センターの電源責任を担当。東光高岳では執行役員としてスマートグリッド事業を統括し、NEDO事業等に参画。2019年にEnergy Linkを創業し、分散型電源の導入・利活用を推進。
ピックアップ記事
はじめての系統用蓄電池(BESS):役割・3つの市場・安全が5分でわかる
2025.09.21
技術・仕様・EMS
その他記事一覧
はじめての系統用蓄電池(BESS) PCS・BMS・EMSが一目でわかる超入門 最初に覚える4つ:kW・kWh・Cレート・RTE 初心者投資家向け・商品別に"実務でわかる"解説2026年版 需給調整市場(EPRX)入門 【BESS向け】 JEPX(卸電力市場)入門 スポット/時間前のしくみと系統用蓄電池(BESS)の使い方まで一気に理解 容量市場(OCCTO)とは?
BESSの参加条件と収益の見方を、図解でやさしく解説 系統用蓄電池(BESS)の系統連系ガイド【2025年版】 — 申請から受給開始まで7ステップ — 消防危第200号解説 - リチウムイオン蓄電池の新設置基準
― 箱ごとに指定数量の倍数を合算しない運用・耐火性収納箱の要点解説 ― 意外と間違える:消防危303号の要点
—『離隔距離は各消防判断』と"合算しない"の条件を3分で理解 発電事業「10MWないと事業者になれない?」を正しく理解
BESS(蓄電池)にも対応した電気事業法の解説 民家から◯mは誤解:騒音規制は"測定位置×dB"が正解
民家からの距離基準は存在しないー正しい測定位置とdB値による判断 系統用蓄電池は第一種特定工作物?
— 都市計画法の位置づけと開発許可の要点