作成日:2025.10.20
更新日:—
中級
規制・許認可
#ガイドライン
#安全(消防)
#設計段階
#運用・点検
#技術横断
※本記事は、作成日または最終更新日時点で公表されている制度情報・数値・資料に基づいて作成しています。
意外と間違える:消防危303号の要点
—『離隔距離は各消防判断』と"合算しない"の条件を3分で理解
リチウムイオン蓄電池の保管・取扱いに関する新たな実務ポイント
条件充足時は距離不要。303号が示す3つの代表ケースと実務対応を解説します。
303号 統合版要点(実務者3分ガイド)
303号の本質(3ポイント)
「不要」の意味:「当該措置を講じないこととして差し支えない」
303号は消防組織法第37条に基づく助言通知であり、最終的な判断は所轄消防によります。「不要」は原則禁止・義務免除ではなく、所轄消防の裁量による省略可という意味です。
表示義務(拒否されやすい抜け)
標識要件(条例(例)第31条の2第2項1号)
303号 第2中1⑵ / 第2中2⑵
・禁煙・火気厳禁の旨を記載
・防火に関し必要な事項を記載
・見やすい場所に掲示
「蓄電池等を収納」表示の追加要件
303号 第2中1⑵ / 第2中2⑵
蓄電池等を収納
標識に必ず追記する文言
(第2中1⑵/第2中2⑵で明記)
「合算しない」取扱いの条件(第2)
条件1:耐火性収納箱/筐体
303号 第2中1
・耐火性収納箱(別紙1試験合格)または耐火性筐体★
・箱/筐体ごとに指定数量未満★ であること
効果:各箱/筐体の指定数量の倍数は合算しない
(所轄消防の判断により省略可)
条件2:キュービクル式+遮炎布
303号 第2中2 / 273号
・必須外箱:厚さ1.6mm以上の鋼板
・開口部を「遮炎布★ 」で完全被覆
効果:指定数量の倍数は合算しない(条件充足時)
(所轄消防の判断により省略可)
相互間距離について(303号 補足事項)
第2の補足⑴~⑶で明記:
・補足⑴:耐火性収納箱/筐体相互間の距離は不要
・補足⑵:キュービクル式設備と自家発電設備相互間の距離は不要
・補足⑶:キュービクル式蓄電池設備相互間の距離は不要
★指定数量:危険物の基準量(政令)
★耐火性筐体:別紙1合格素材の筐体
★遮炎性能:特定防火設備相当(96号別紙1)
「3m」の二重文脈を正確に理解する
303号において「3M」が指すもの:
・落下試験高さ( 第3中2(1)):地上3mから落下させ、漏液・可燃性蒸気の漏れ無し
・梱包高さ条件( 第3中2(2)):4.0kg以下は3m、2.8kg以下は6m
303号は固定離隔距離を定めておらず、条件充足時に距離不要
混同しないよう注意!別制度の「3m」:
・建築物からの3m離隔は別制度(対象火気省令/火災予防条例例)の規定
・屋外の蓄電池設備に対する建築物からの離隔要件(一定の延焼防止措置で緩和可)
重要脚注:303号は固定離隔距離を定めておらず、3mは落下試験高さ/梱包高さ(第3中2)の数値です
重要:保管と設置の線引き
保管(303号中心)
・倉庫・一時置場での保管
・商品在庫、工事待ち製品
・仮設電源・デモ機、輸送途中
主な規制:
303号(距離・箱・表示)
設置(別規制群)
・恒久設備・系統接続BESS
・系統連系設備、恒久電源
・火災予防条例例、建築基準法、電技
警告:
保管OKでも設置NGのケースあり
初期計画から両面を併走させることが重要(保管と設置の各規制対応を確認)
303号の代表的ケース一覧表(簡略版)
ケースA:耐火性収納箱/筐体
主要条件:
耐火性収納箱/筐体(別紙1試験)
箱/筐体ごと指定数量未満
標識+「蓄電池等を収納」表示
効果:
各箱/筐体の倍数は合算しない
相互間の距離不要
ケースB:キュービクル+遮炎布
主要条件:
外箱:1.6mm以上の鋼板
開口部を遮炎布で完全被覆
特定防火設備と同等の遮炎性能
標識+「蓄電池等を収納」表示
効果:
指定数量の倍数合算しない
設備相互間の距離不要
ケースC:空地・塀の省略
主要条件:
ケースA又はケースBの条件を満たす
条例(例)第34条の3特例の適用
所轄消防長が支障なしと認める
効果:
周囲の空地保有の省略可
防火上有効な塀等の設置省略可
303号「第1」対象・適合性のチェック表
リチウムイオン蓄電池の適合性確認(303号 第1)
303号 第1(1)(2)(3)、補足(1)(2)で明記
蓄電池を収納する「耐火性収納箱/筐体」や「キュービクル式設備」を申請する際、以下のいずれかの適合ルートを満たしていることを確認します。
A国内規制適合ルート
□ PSE表示あり(電気用品安全法省令)
電気用品安全法の技術基準に適合し、PSEマークが表示されている
■根拠:303号 第1(1)
□ 車両保安基準に適合
道路運送車両法の保安基準に適合している電池
■根拠:303号 第1(2)
□JIS規格に適合
JIS C8715-2(産業用リチウム二次電池)、JIS C4441(キュービクル式蓄電池設備)
■根拠:303号 第1(2)、補足(1)
□ UN38.3テスト合格
国連危険物輸送勧告試験基準マニュアル第3部38.3
■根拠:303号 第1(2)
B国際規格適合ルート
□ IEC規格に適合
IEC 62619(産業用電池安全要求事項)、IEC 62933-5-2(電力貯蔵システム安全)
■根拠:303号 第1(3)、補足(2)
□ UL規格に適合
UL 9540A(エネルギー貯蔵システム火災試験)、UL 1973(電池システム)
■根拠:303号 第1(3)、補足(2)
□ その他の同等以上規格
上記と同等以上の安全性を有することが確認できる規格(UL 1642、EN 62619等)
■根拠:303号 第1(3)、補足(2)
□ 第三者試験確認の活用
KHK等の試験確認済証(R6.7.24開始、R7.10.9改正)
■根拠:消防危116号(R7.5.27)
審査のポイント
❶適合証明書確認
証明書・試験成績書等の添付
❷型式一致確認
証明書と設置予定型式の一致
❸有効期限確認
証明書の有効期限内であること
❹試験確認番号
KHK等の番号を申請書に明記
要注意事項
303号「第1」は蓄電池自体の安全性を確認するもので、「第2」「第3」の距離・空地要件とは独立して満たす必要があります。いずれかのルートで適合性が確認できない場合、303号による運用ができません。
ケース別詳細(A):耐火性収納箱/筐体
303号では「合算しない」「距離不要」「空地等省略」の3つの効果が条件充足で得られます。ケースAの詳細条件を確認しましょう。
ケースA:耐火性収納箱/筐体 詳細
条件要件:
・必須:耐火性収納箱(別紙1試験合格)または耐火性筐体
・必須:箱/筐体ごと指定数量未満
・必須:条例(例)第31条の2第2項1号の標識
・必須:「蓄電池等を収納」表示
別紙1合格基準:
・第一試験:非加熱面での10秒超の噴出/発炎なし
・第二試験:60分後の非加熱面温度≦80℃
効果:
・各箱/筐体の指定数量の倍数は合算しない
・箱/筐体相互間の距離は不要(当該措置を講じないこととして差し支えない)
※「不要」とは「当該措置を講じないこととして差し支えない」(所轄消防の判断による省略可)という意味です
根拠条文:
• 303号 第2中1(合算しない)
• 303号 補足⑴(相互間の距離不要)
• 条例例 第31条の2第2項1号(標識)
• 消防危303号 別紙1(耐火試験)
ケース別詳細(B/C)
ケースB:キュービクル+遮炎布の詳細条件
必須条件:外箱・遮炎布の仕様
消防危第273号(令和6年9月17日)
・外箱:厚さ1.6mm以上の鋼板(または同等以上の耐火性材料)
・開口部を遮炎布で完全に被覆(隙間なし)
・遮炎布:特定防火設備と同等の遮炎性能を有すること
消防危96号 別紙1 (R4.4.27、R6.9.17一部改正)
— 945±20℃×60分の加熱
— 非加熱側に10秒超の火炎なし
— 亀裂・破損による開口なし
・固定方法が適切で、脱落しないこと
※ネジ穴部の火炎侵入対策、オーバーラップを文書化
遮炎性能の確認方法
消防危96号 別紙1(R4.4.27、R6.9.17改正)
・標準加熱曲線60分で試験した場合に
— 非加熱面に10秒超の火炎噴出がない
— 非加熱面の亀裂・開口がない
・所轄が「遮炎性能を有する」と認める構造
効果:キュービクル同士は原則合算されるが、外箱が耐火性筐体ならば非合算可能
ケースC:空地・防火塀の省略
条件と法的根拠
消防危303号 第3の1 × 条例例第34条の3
・ケースA(耐火性収納箱/筐体)または
・ケースB(キュービクル+遮炎布)の条件充足が前提
・条例(例)第34条の3の特例適用により空地・塀の省略が可能
重要:「当該措置を講じないこととして差し支えない」は所轄消防の判断による省略可(任意運用)の意味です
条例(例)第34条の3の特例ポイント
特例の適用条件
・消防長または消防署長が火災予防上支障がないと認める場合
・事前協議で具体的な代替措置の合意が必要
・申請書類に特例適用の明示が必要
効果:周囲の空地・防火塀の設置義務を省略可能
第三者試験確認の具体効果
消防危第116号(令和7年5月27日)
ポイント
:第三者機関の試験確認を活用して差し支えない(例:KHK等)
審査省力化のメリット
・書類削減試験確認番号の提示で詳細試験データの提出が不要に
・手続効率化 型式認証により複数案件での再利用が可能
・判断基準明確 統一的な審査で自治体間の差異を軽減
※ 116号では特定団体の指定や制度日付は規定されていません
現場確認の簡素化
・標準ラベルの貼付により視認性向上
試験確認番号・型式・製造者情報が一目で確認可能
・検査時の即時照合が可能に
データベースとの照合で確認作業の効率化
・現地で改造・不正使用の検出が容易に
・点検・保守のトレーサビリティ向上
※ 現場で使用する場合は具体的なラベルサンプルを事前に所轄消防に確認
実務フロー(申請から運用まで)
303号対応の基本手順を5ステップで整理しました。詳細な提出物や確認事項はp.10のチェックリストをご参照ください。
エビデンス最小パッケージ
・試験成績書
A:303号別紙1試験合格証明書/KHK試験確認
B:遮炎布試験確認書(特定防火設備相当)
・標識・表示
共通:第31条の2標識+「蓄電池等を収納」表示図
・条文照合表
303号条番号(第2中1/2、第3)⇔設備仕様対照表
・図面・計算書
指定数量計算書、設置図、標識位置図
プロセスの流れ
・方式選択(A:耐火性収納箱/筐体、B:キュービクル+遮炎布)
・エビデンス収集(試験成績書・確認書・図面等)
・所轄消防との事前協議(条番号ベースの照合)
・施工・設置(固定方法・貫通部処理の実施)
・運用・点検(条件範囲内での管理)
書類準備のポイント
提出前に条番号と条件の一致を確認。特に指定数量・表示・試験基準は審査で重視されます。KHK試験確認を活用すると審査負担軽減に
よくある誤解とQ&A
Q
Q1. 303号は「屋外は建物から3m離隔」と決めている?
いいえ。303号は距離の固定値を定めていません。3mは303号内では試験・梱包の数値で登場。建築物からの3mは別制度(対象火気省令/モデル条例)での話。
Q
Q2. キュービクル外箱は「6mm」必要?
いいえ。1.6mm以上が原文です。
Q
Q3. 箱を並べたら"倍数合算"される?
条件を満たせば「合算しない」扱いが可能です(第2中1/第2中2)。標識/掲示の有無に注意。
Q
Q4. KHKの証明が必須?
いいえ。116号は"第三者機関の試験確認の活用可"とだけ示しており、特定団体の指定や制度日付は規定していません。
重要ポイント
303号は消防組織法 第37条に基づく"助言通知"です。最終判断は所轄消防です。条番号×数値を一次情報で確認し、条件型の免除を正しく使うことが意思決定の鍵です。
Q5. 工場(組立・充放電)の特例は? ⇒ 令和7年5月27日付 消防危第116号(351号廃止)が最新運用。保管(303号)と文脈が異なるため、工場等の特例は116号を参照。
申請時チェック表:条番号×数値条件の一括確認
審査担当者が丸付けできる粒度で条番号と数値条件を整理。提出前の最終確認用として活用。
303号 第2中1「合算しない」条件
□ 耐火性収納箱(別紙1合格)/耐火性筐体に収納
□ 箱/筐体ごとに指定数量未満の蓄電池収納
□ 標識掲示:条例例[第31条の2第2項1号]+「蓄電池等を収納」表示
効果: [合算しない][相互間距離不要]
303号 第2中2「キュービクル式」条件
□ 外箱:厚さ1.6mm以上の鋼板(又は同等以上)
□ 開口部を遮炎布で完全被覆: [273号]改正に基づく
□ 標識掲示:条例例[第31条の2第2項1号]準拠
効果:[合算しない][相互間距離不要](補足条項)
303号 補足・第3「距離不要・空地省略」
□ 補足⑴〜⑶:耐火性収納箱/筐体相互間/キュービクル式蓄電池設備相互間の距離は不要
□ 第3 1⑴〜⑵:条例例[第34条の3]適用で空地・塀の省略可
文言:「第34条の3を適用し当該措置を講じないこととして差し支えない」
条例例関連条項
□ [第31条の2第2項1号]:標識要件(品名・最大数量・火気厳禁等)
□ [第34条の3]:空地・塀の特例(所轄消防長又は消防署長が認める場合)
参照:[火災予防条例(例)令和5年5月31日公開版]
数値条件一覧(チェックボックス形式)
別紙1(耐火性収納箱)試験基準
□ 第一試験:非加熱面へ10秒超の火炎噴出なし
□ 第二試験:60分後の非加熱面温度≤80℃
□ 第三者試験確認([116号]に基づく活用可、例:KHK等)
遮炎布性能確認(キュービクル開口部用)
□ 特定防火設備と同等の遮炎性能([273号]本文)
□ 標準加熱曲線60分/非加熱側10秒超の火炎なし
□ 945℃±20℃×1h試験(一般的な試験例、所轄確認必要)
3m関連条件(離隔距離ではない)
□ 落下試験:地上高3mから落下させ漏液・可燃性蒸気の漏れ無し
□ 梱包高さ:4.0kg以下は3m、2.8kg以下は6m
所轄消防への提示文書
□ 条番号×数値条件の照合表(本チェックリスト添付)
□ 標識サンプルと設置位置図([第31条の2第2項1号]準拠)
審査担当者の理解促進のポイント
「[303号]は固定距離を定めていない」「条件充足で距離不要・合算しない」「特例は[第34条の3]根拠」の3点を明確に伝え、条番号と数値条件を具体的に示すことで、審査の読み替えをゼロにできます。
出典
消防危303号
https://www.fdma.go.jp/laws/tutatsu/items/7e20368cd1aee3f87c66c4579567b04772a45003.pdf消防危273号
https://www.fdma.go.jp/laws/tutatsu/items/240917_kiho273.pdf消防危116号
https://www.fdma.go.jp/laws/tutatsu/items/250527_kiho_116.pdf条例例
https://www.fdma.go.jp/laws/laws/items/20230531_joureirei.pdfKHK試験確認(R7.10.9改正)
https://www.khk-syoubou.or.jp/pdf/guide/test_confirm/20241025gaiyo.pdf監修者
青栁 福雄
Aoyagi fukuo
Energy Link 取締役 COO
系統運用・需要側制御・スマートグリッド分野の実務家。東京電力にて変電所の建設・運用・保守および大口顧客向けエネルギーソリューションに従事。マイエナジー出向時には2002年日韓ワールドカップの複数会場および国際放送センターの電源責任を担当。東光高岳では執行役員としてスマートグリッド事業を統括し、NEDO事業等に参画。2019年にEnergy Linkを創業し、分散型電源の導入・利活用を推進。
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