作成日:2025.10.19
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初級
技術・仕様・EMS
EMS/SCADA/通信
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※本記事は、作成日または最終更新日時点で公表されている制度情報・数値・資料に基づいて作成しています。
PCS・BMS・EMSが一目でわかる超入門
安全・連系・最適化のポイントを図でやさしく
PCSは直流と交流を双方向に変換し連系保護、BMSはセル監視で安全確保、EMS/SCADA/PLCは最適化と遠隔監視を担います。日本の連系要件と主要規格を図解で整理します。
CONTENTS目次
PCS:電気の「形」を整える
Power Conditioning System:双方向変換と系統連系保護の要
◆何をしている?
・蓄電池の直流(DC)と系統の交流(AC)を「双方向」に変換(充電/放電)
・周波数や電圧の逸脱を検知し、単独運転を防止するなどの連系保護を実行
◆なぜ大事?
・日本の「電力品質確保に係る系統連系技術要件ガイドライン」に適合することが前提
・事故時にも系統を守るため、保護協調の中心機器として安全と安定を確保
PCSの主な保護機能
・単独運転防止:系統遮断時の自動停止
・周波数逸脱検出(必要に応じて周波数応答を実施)
・電圧異常検出(過電圧・不足電圧)
・(連系先の要件で求められる場合)電圧低下等時の継続運転:Fault Ride Through〈LVRT/HVRT〉
・系統事故時保護(短絡・地絡)
・直流過電流保護
用語メモ
・直流(DC)
:向きが変わらない電気(電池は原則DC)
・交流(AC)
:向きが周期的に変わる電気(商用電力はAC)
・単独運転防止
:系統から切り離されたら自動停止する保護
BMS:電池の"体調管理"とは?
Battery Management System:バッテリーの状態監視と安全制御の要
◆何をしている?
・バッテリーの電圧・電流・温度をリアルタイムに監視
・各電池セルの充電状態を均等化(セルバランシング)
・過充電・過放電・過熱などの危険状態を防止
◆なぜ大事?
・リチウムイオン電池など高エネルギー密度の蓄電池は、適切な管理がないと発火・爆発リスクがある
・電池の劣化を抑え、寿命を延長し、システム全体の効率と安全性を向上
・IEC 62619の要求に準拠した安全設計が前提(産業用リチウムイオン電池の国際安全規格)
PCSの主な保護機能
・温度監視・制御
:安全動作範囲内に保つ
・電圧・電流監視
:過充電・過放電防止
・セルバランシング
:各セル間の電圧均等
・SOC・SOH推定
:充電状態と健全性の計算
・異常検知・対応
:安全装置作動、システム停止
・フェイルセーフ保護
:異常時は主接触器を開放し安全停止(IEC 62619要求に対応)
用語メモ
・SOC(State of Charge)
:充電率、電池残量の割合
・SOH(State of Health)
:電池の健全性、劣化度合い
・セルバランシング
:複数セル間の電圧均等化処理
・フェイルセーフ
異常発生時に安全側に制御する機能
EMS/SCADA/PLC:全体の"司令塔"
Energy Management System:エネルギー全体の最適制御と監視を実現
◆何をしている?
・エネルギーリソース(蓄電池・太陽光・系統電力等)を総合的に管理・制御して最適運用
・需要と供給のバランスを予測・監視し、省エネ・省コスト・CO₂削減などの目標を達成
・PCS、BMSなど各サブシステムに指令を出す中央制御システムとして機能
◆なぜ大事?
・電力システム全体の効率化・安定化・最適化により経済性と環境性を両立
・再生可能エネルギーの導入拡大や電力自由化に伴い、ますます重要性が高まっている
EMSの主な機能
・需給予測・計画::天候・電力需要・料金を予測し運用計画を立案
・リアルタイム制御:状況に応じた充放電・電力融通の最適制御
・監視・可視化:システム状態・電力フローをリアルタイム表示
・データ蓄積・分析:運用データの記録・統計解析・レポート
・セキュリティ管理:アクセス制御・通信暗号化・不正検知
関連システムの違い
・EMS
:エネルギー全体の最適化・運用管理(HEMS/BEMS/FEMS/CEMS等)
・SCADA
:監視制御システム(主に産業用・電力系統向け)
・PLC
:プログラマブルコントローラ(現場機器の直接制御)
3つのシステムの全体構造と関係図
PCS・BMS・EMSの相互関係と情報の流れ
EMS - 全体最適化の司令塔
・電力需給監視・予測と運転計画最適化
・各設備への運転指令の発行と監視
・エネルギー利用効率の最大化と電力料金削減
PCS - 電力変換と連系保護
・DC/AC変換と系統連系保護(単独運転防止)
・電圧・周波数の安定化と系統連系制御
・連系先要件に応じたFRT(LVRT/HVRT)機能
BMS - バッテリーの安全管理
・セル監視と温度管理による安全制御
・過充電・過放電防止と保護機能
・IEC 62619準拠のフェイルセーフ機能(異常時主接触器開放)
電力系統 蓄電池
電力系統:電力網への連系と電力品質確保
蓄電池:エネルギー貯蔵装置(リチウムイオン等)
両者の連携によるピークシフト・BCP対応の実現
法規・規格 かんたん早見表
電力貯蔵システムの安全性と系統連系に関する主要法規制
適用範囲
主に日本国内の系統連系型蓄電システム(BESS)に適用される法規制および国際規格について整理しています。 家庭用・産業用・電力系統用など、用途に応じて適用される規格が異なります。
規格/法令:
資源エネルギー庁「電力品質確保に係る系統連系技術要件ガイドライン」
区分:
連系の基本
主な要求事項・ポイント:
・単独運転防止機能
・電圧・周波数変動対策
・高調波抑制対策
・短絡電流対策
規格/法令:
JIS C 8715-2 / IEC 62619(産業用リチウムイオン電池の安全要求)
区分:
電池の安全(産業用)
主な要求事項・ポイント:
・産業用リチウムイオン電池の安全要求
・温度管理・過充電保護
・BMSの要件と安全機能
規格/法令:
IEC 62933-5-1:2024(系統連系EESの安全:一般)
区分:
EESの安全(一般)
主な要求事項・ポイント:
・系統連系EESの安全要件
・安全性評価方法
・環境条件・試験方法
規格/法令:
IEC 61850-5:2013 + AMD1:2022(電力自動化の通信要件/機能モデル)
区分:
通信・監視
主な要求事項・ポイント:
・電力自動化の通信要件
・機能モデル
・プロトコルとデータモデル
規格/法令:
電気事業法
区分:
国内法令
主な要求事項・ポイント:
・電気工作物の保安規制
・事故報告義務
・定期点検・検査要件
規格/法令:
JEM 149
区分:
PCS規格
主な要求事項・ポイント:
・パワコンディショナの一般要件
・効率・保護機能
・表示・操作性要件
規格/法令:
UL 1741 / UL 9540
区分:
国際安全規格
主な要求事項・ポイント:
・インバータ・コントローラの安全要件(UL 1741)
・エネルギー貯蔵システム安全要件(UL 9540)
重要ポイント:
規格適合性は設計初期段階から考慮すべきです。特に系統連系については、各電力会社との事前協議が必要であり、地域によって運用ルールが異なる場合があります。蓄電池システムの規格は技術発展とともに頻繁に更新されるため、最新版の確認が不可欠です。
よくある質問(FAQ)と導入ポイント
PCS・BMS・EMSに関する典型的な質問と技術的根拠
Q
PCSとBMSの連携はどのように行われる?
BMS側がバッテリーの状態(SOC・温度・電圧)情報を提供し、PCSはその情報を基に充放電動作を最適化。通信プロトコルはCAN/RS485/Modbusが一般的。
Q
大規模設備と家庭用設備でシステム構成に違いはある?
基本構成は同じだが、大規模設備では複数のPCS・BMS間の連携が必要で、EMSの役割が重要。小規模では単一ユニットで機能統合されることが多い。
Q
バッテリー交換時にBMSも交換が必要?
バッテリータイプが同じなら再利用可能だが、異なる場合はBMS設定の再調整が必要。多くのメーカーは専用BMSとバッテリーのセット交換を推奨。
Q
EMSが故障した場合のシステム動作は?
PCSとBMSは自律的な保護機能を持つため基本動作は継続。ただしEMSの最適化・スケジュール機能は停止。重要施設では冗長化が推奨される。
一次情報出典
• 資源エネルギー庁「電力品質確保に係る系統連系技術要件ガイドライン」
• IEC 62619:2022(産業用リチウムイオン電池の安全要求)
• IEC 61850-5:2013 + AMD1:2022(電力自動化の通信要件)
参考資料
• 日本電気協会 (JEAC) 系統連系規程
• IEC 62933 (電力貯蔵システム規格)
• IEEE 1547 (分散型電源の系統連系)
• NEDO蓄電池技術開発ロードマップ
導入時の重要ポイント
• PCS・BMS・EMSの統合動作検証を事前実施
• 将来の拡張性を考慮したシステム構成
• 地域の電力品質規定に準拠した設定
• 定期メンテナンス計画の策定
まとめ:三位一体の重要性
一次情報出典(参照規格・ガイドライン)
システムの役割と価値
PCS = 法令適合・安全連系
BMS = 安全・寿命・性能管理
EMS = 全体最適化・価値創出
三者が揃ってはじめてBESSの本当の価値が発揮されます。各システムは異なる機能・要件に集中し、連携して安全で効率的なエネルギー貯蔵を実現します。
EMS
・全体最適化のための「司令塔」
・電力需給の監視・予測機能
・PCS・BMSへの運転指令
・外部システムとの連携・通信
PCS
・電力変換(DC⇔AC)と電力品質確保
・系統連系保護機能(単独運転防止等)
・FRTなど系統安定化への貢献
・電圧・周波数の安定化制御
BMS
・電池セルの状態監視と保護
・温度管理とセルバランシング
・過充電・過放電防止制御
・フェイルセーフ(異常時主接触器開放)
BESS蓄電システム
・エネルギー貯蔵装置の統合システム
・蓄電池とPCS・BMSの連携統合
・電力需給調整やピークシフト機能
・システムとしての価値を発揮
監修者
青栁 福雄
Aoyagi fukuo
Energy Link 取締役 COO
系統運用・需要側制御・スマートグリッド分野の実務家。東京電力にて変電所の建設・運用・保守および大口顧客向けエネルギーソリューションに従事。マイエナジー出向時には2002年日韓ワールドカップの複数会場および国際放送センターの電源責任を担当。東光高岳では執行役員としてスマートグリッド事業を統括し、NEDO事業等に参画。2019年にEnergy Linkを創業し、分散型電源の導入・利活用を推進。
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